7.内頸動脈バルーン閉塞試験の検討
「目的」 頸動脈内膜剥離術(CEA)での内シャントの必要性には未だに議論がある. 我々は頸動脈閉塞試験時の各種パラメータを解析してきたが, このデータをもとに頸動脈一時閉塞の可否を検討した. 「方法」 対象は種々の脳外科耳鼻科疾患により術中に頸動脈の一時または永久閉塞が必要な27症例である. 術前に15~30分間の内頸動脈バルーン閉塞試験(BOT)を施行し, 神経症状, mean stump pressure (mSTP), EEG, SSEPを記録した. BOT中の局所脳血流量(rCBF)をPETまたはXe-CTを用いて測定した. 測定中の全身血圧はその患者の平常時血圧に保った. 「結果」...
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Published in | 脳卒中 Vol. 20; no. 6; p. 620 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本脳卒中学会
25.12.1998
日本脳卒中学会 |
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ISSN | 0912-0726 1883-1923 |
DOI | 10.3995/jstroke.20.620 |
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Summary: | 「目的」 頸動脈内膜剥離術(CEA)での内シャントの必要性には未だに議論がある. 我々は頸動脈閉塞試験時の各種パラメータを解析してきたが, このデータをもとに頸動脈一時閉塞の可否を検討した. 「方法」 対象は種々の脳外科耳鼻科疾患により術中に頸動脈の一時または永久閉塞が必要な27症例である. 術前に15~30分間の内頸動脈バルーン閉塞試験(BOT)を施行し, 神経症状, mean stump pressure (mSTP), EEG, SSEPを記録した. BOT中の局所脳血流量(rCBF)をPETまたはXe-CTを用いて測定した. 測定中の全身血圧はその患者の平常時血圧に保った. 「結果」 mSTPが45mmHg未満の13例中6例で神経症状の出現(意識消失, 失語症:各1例), EEG異常(徐波化:3例), またはSSEP異常(N20振幅減少:1例)を認めた. 他の7例はこれらのパラメータは全て正常であったが, その内2例で永久的虚血合併症を来たし, 1例ではrCBFの減少率が40%以上であった. mSTPが45mmHg以上の症例は14例であったが,全てのパラメータに異常はなく,全例rCBF減少率は約10%以内で虚血合併症もなかった. 安全域を考え,mSTPが45~60mmHgの6例中2例にDiamox負荷後のBOT中のrCBFも検討した. その結果1例ではDiamox負荷後BOTで初めて有意なrCBFの低下が明らかとなった. mSTPの低下とrCBFの減少率には相関関係があった. 「結論」 mSTPは頸動脈閉塞の可否をラフに知るには極めて簡単でよい指標である. 内頸動脈閉塞中に神経症状,EEG,SSEPのどれか一つでも異常があるか,mSTPが45mmHg未満の場合には虚血合併症を来たす可能性があるものとして手術に際し慎重な対応が必要である. mSTPが60mmHg以上でrCBFの減少がない場合は内頸動脈閉塞は安全に行い得る. 頸動脈病変を持つ患者の頸動脈閉塞試験は検査そのものが危険であるため現実的には困難である点と,ほんの短い虚血にも耐えられない患者が存在することから,CEAに際しては全例で内シャントを使う方が安全と考える. |
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ISSN: | 0912-0726 1883-1923 |
DOI: | 10.3995/jstroke.20.620 |