鋳型走査電子顕微鏡法によるエナメル形成に伴うラット歯槽の血管分布

ラット下顎切歯唇側歯槽の血管分布をメルコックス樹脂注入法を用いて走査電顕で観察した. 歯槽には血管分布の異なる層が3層あった. 内層では毛細血管網がエナメル器に接して分布したが, それはエナメル形成過程に伴って網工状形態からはしご状形態へと変化した. 中層では下歯槽動脈から起こった小動脈と, この小動脈から分かれた細動脈が分布したが, 細動脈はさらに分かれて内層の毛細血管となった. 洞様の静脈が分布する外層は歯槽骨側に存在したが, この静脈は内層の近・遠心辺縁部を走る毛細血管と吻合した. 毛細血管網の変化については, 網工状網は内エナメル上皮細胞の増殖・分化と初期のエナメル基質形成に必要な物質...

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Published inArchivum histologicum japonicum Vol. 42; no. 1; pp. 81 - 88
Main Authors 岩久, 文彦, 小沢, 英浩
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 国際組織細胞学会 1979
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ISSN0004-0681
DOI10.1679/aohc1950.42.81

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Summary:ラット下顎切歯唇側歯槽の血管分布をメルコックス樹脂注入法を用いて走査電顕で観察した. 歯槽には血管分布の異なる層が3層あった. 内層では毛細血管網がエナメル器に接して分布したが, それはエナメル形成過程に伴って網工状形態からはしご状形態へと変化した. 中層では下歯槽動脈から起こった小動脈と, この小動脈から分かれた細動脈が分布したが, 細動脈はさらに分かれて内層の毛細血管となった. 洞様の静脈が分布する外層は歯槽骨側に存在したが, この静脈は内層の近・遠心辺縁部を走る毛細血管と吻合した. 毛細血管網の変化については, 網工状網は内エナメル上皮細胞の増殖・分化と初期のエナメル基質形成に必要な物質を供給するのに適し, はしご状網はエナメル形成のさらに進んだ時期のエナメル基質の形成と石灰化に必要な多くの有機, 無機の物質を供給するのに適した形であると考えられた.
ISSN:0004-0681
DOI:10.1679/aohc1950.42.81