無形資産投資と人的資本形成のアンバランス~日本経済の成長制約に関する一考察
日本経済では、R&D や ICT などの無形資産への投資が拡大する一方、企業による教育訓練支出が低迷し、人的資本形成の遅れが生じている。費用ベースで推計された人的資本ストックも頭打ちとなり、技能蓄積の停滞が懸念される。こうした背景には、企業行動の変化、人口動態の変化、公的支援策の脆弱性など、構造的な要因が複合的に作用している。人的資本は他の資本と補完関係にあり、その戦略的投資は生産性向上に不可欠である。政策的には、教育支援の継続性確保、企業インセンティブの再設計、労働市場の柔軟性向上、教育制度との連携強化が求められる。さらに、人的資本を内生化したマクロ経済モデルによる試算からは、教育投...
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Published in | 経済分析 Vol. 210; p. 210_05 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
内閣府経済社会総合研究所
24.07.2025
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Subjects | |
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ISSN | 0453-4727 2758-9900 |
DOI | 10.60294/keizaibunseki.210_05 |
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Summary: | 日本経済では、R&D や ICT などの無形資産への投資が拡大する一方、企業による教育訓練支出が低迷し、人的資本形成の遅れが生じている。費用ベースで推計された人的資本ストックも頭打ちとなり、技能蓄積の停滞が懸念される。こうした背景には、企業行動の変化、人口動態の変化、公的支援策の脆弱性など、構造的な要因が複合的に作用している。人的資本は他の資本と補完関係にあり、その戦略的投資は生産性向上に不可欠である。政策的には、教育支援の継続性確保、企業インセンティブの再設計、労働市場の柔軟性向上、教育制度との連携強化が求められる。さらに、人的資本を内生化したマクロ経済モデルによる試算からは、教育投資を通じた高技能人材の育成が、技術革新と成長を支える重要な経路となることが示されている。人的資本形成の制度化と政策評価の枠組み整備が急務である。 |
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ISSN: | 0453-4727 2758-9900 |
DOI: | 10.60294/keizaibunseki.210_05 |