抗生物質による急性出血性大腸炎の病態と成因 第1報急性出血性大腸炎の臨床像

本邦における“Antibiotics associated colitis”として, 主に合成ペニシリン内服後にみられる急性出血性大腸炎が注目されている. 自験例29例の臨床像を検討し以下の1成績をえた. ABPCを主とした合成ペニシリン内服後1~5日で腹痛, 下痢が突然生じ, やや遅れて頻回の血性下痢を来す. 内視鏡検査では多くは下行結腸より口側に暗赤色浮腫性粘膜隆起と管腔の狭細化, 縦走する線条発赤をみる頻度が高く, 注腸レ線像では著明な腸管の攣縮像が特徴的である. 粘膜組織所見では固有層の出血が顕著で, 好酸球浸潤が目立つが炎症性細胞浸潤, びらんなどは少ない. 一般検査成績上, 白血球...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in医療 Vol. 37; no. 8; pp. 755 - 761
Main Authors 森, 忠敬, 鈴木, 紘一, 向井, 美和子, 横田, 曄, 小尾, 和洋, 北洞, 哲治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 20.08.1983
医療同好会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.37.755

Cover

More Information
Summary:本邦における“Antibiotics associated colitis”として, 主に合成ペニシリン内服後にみられる急性出血性大腸炎が注目されている. 自験例29例の臨床像を検討し以下の1成績をえた. ABPCを主とした合成ペニシリン内服後1~5日で腹痛, 下痢が突然生じ, やや遅れて頻回の血性下痢を来す. 内視鏡検査では多くは下行結腸より口側に暗赤色浮腫性粘膜隆起と管腔の狭細化, 縦走する線条発赤をみる頻度が高く, 注腸レ線像では著明な腸管の攣縮像が特徴的である. 粘膜組織所見では固有層の出血が顕著で, 好酸球浸潤が目立つが炎症性細胞浸潤, びらんなどは少ない. 一般検査成績上, 白血球増多がみられ, 好酸球数は遅れて増加する例がみられた. 糞便の定量的培養上, ある単一菌の異常は共通してみられず, 総菌数, 特に嫌気性菌の著明な減少がみられた. 上記成績より本症の病態上, 腸管痙攣, 虚血性の機序が大きな役割を果たしている可能性が示唆された.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.37.755