腎組織像の改善後も蛋白尿の持続する肥満関連腎症 (ORN) の1例

膜性増殖性糸球体腎炎 (membranoproliferative glomerulonephritis: MPGN) は,メサンギウム細胞の増加,基質の増加,糸球体毛細血管壁の二重化を呈する慢性糸球体腎炎である。組織学的に1982年のWHOの分類で高電子密度沈着物の存在様式により,I型からIII型に分類されている1)。また,MPGNは将来的に腎不全に至る可能性のある進行性原発性糸球体腎炎の一つであり,低補体血症の遷延することが特徴である。小児期では学校検尿で発見されることもある疾患であるが,1970年代には約10年の経過でほぼ半数が末期腎不全に至る疾患であった2)。1980年代にはプレドニゾ...

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Published in日本小児腎臓病学会雑誌 Vol. 20; no. 2; pp. 189 - 195
Main Authors 前川, 講平, 高木, 信明, 澤木, 潤子, 前, 寛, 綾部, 信彦, 大島, 圭介, 服部, 益治, 谷澤, 隆邦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本小児腎臓病学会 15.11.2007
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Summary:膜性増殖性糸球体腎炎 (membranoproliferative glomerulonephritis: MPGN) は,メサンギウム細胞の増加,基質の増加,糸球体毛細血管壁の二重化を呈する慢性糸球体腎炎である。組織学的に1982年のWHOの分類で高電子密度沈着物の存在様式により,I型からIII型に分類されている1)。また,MPGNは将来的に腎不全に至る可能性のある進行性原発性糸球体腎炎の一つであり,低補体血症の遷延することが特徴である。小児期では学校検尿で発見されることもある疾患であるが,1970年代には約10年の経過でほぼ半数が末期腎不全に至る疾患であった2)。1980年代にはプレドニゾロンの投与により予後の改善を認め,末期腎不全への移行は約15%に低下している3)。  一方,肥満関連腎症 (Obesity-related nephropathy: ORN) も近年注目されている腎症の一つであり,全身性障害を伴わない著しい肥満においてネフローゼ症候群に匹敵する蛋白尿を示す病態と定義され,蛋白尿,糸球体肥大,巣状糸球体硬化を来し,腎不全に至ることもある疾患である4)~8)。今回,腎組織像の改善後も蛋白尿の持続するMPGN typeIIIの1例を経験し,病因がORNと考えられたので報告する。
ISSN:0915-2245
1881-3933
DOI:10.3165/jjpn.20.189