難病の妻と2人暮らしとなるCVA患者へのアプローチ 老老介護を安心して続ける為に

【はじめに】 退院後、難病を呈する妻と2人暮らしとなるCVA患者に対し、在宅生活を続けていく為の条件を整理し、アプローチをしたことで症例と妻の結びつきを保ちつつ在宅復帰するに至った。本症例を通して老老介護を安心して続ける為のアプローチについて考える。 【症例紹介】 70代後半、男性、平成21年5月発症の脳出血後遺症(右片麻痺)。Br.stage上肢、手指、下肢共に_IV_。知的面は短期記憶の低下を認めた(HDS-R18点)。高次脳機能障害は軽度右半側空間無視、注意障害、失語症を認めた。ADLは車椅子、左片手にて食事以外に軽介助を要した(B.I.55点)。難病の妻(要介護1、外出に要介助)と2人...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 196
Main Authors 溝田, 佳代, 大野, 沙織, 佐藤, 友美, 定村, 直子, 矢野, 高正, 佐藤, 浩二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2010
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Summary:【はじめに】 退院後、難病を呈する妻と2人暮らしとなるCVA患者に対し、在宅生活を続けていく為の条件を整理し、アプローチをしたことで症例と妻の結びつきを保ちつつ在宅復帰するに至った。本症例を通して老老介護を安心して続ける為のアプローチについて考える。 【症例紹介】 70代後半、男性、平成21年5月発症の脳出血後遺症(右片麻痺)。Br.stage上肢、手指、下肢共に_IV_。知的面は短期記憶の低下を認めた(HDS-R18点)。高次脳機能障害は軽度右半側空間無視、注意障害、失語症を認めた。ADLは車椅子、左片手にて食事以外に軽介助を要した(B.I.55点)。難病の妻(要介護1、外出に要介助)と2人暮らしであり、病前は朝食の準備、洗濯、掃除を行いながら、妻の通院の送迎や車椅子介助を近所に住む長女と協力して行っていた。また、長女がいる時間には趣味であるラジコン同好会にも積極的に参加していた。長女は障害を持つ子どもがおり、今以上のサポートは困難な状態である。介護保険で週3回のヘルパーも利用していた。本人・家族は自宅にて生活が送れる事を強く希望していた。反面、本人は麻痺の改善や今後も妻の援助ができるのかといった不安を訴えていた。 【目標】 6ヵ月で長女と家事を分担し妻の援助を行いながら自宅で生活ができるようになる。 【経過】 妻との生活を継続するための条件として1.症例自身のセルフケアが自立する2.朝食の準備、洗濯、掃除などの家事ができる3.自動車の運転ができる4.外出先での妻の車椅子介助ができるの4点が挙がった。まず1.について、両手での動作習熟、全身耐久性の向上を図った。また、努力性となり易く転倒リスクも高かったため安全に行える方法を本人と検討し、症例自身が安全な動作方法を選択できるようアプローチした。それにより、2ヶ月で目標達成となった。2.、3.は安全かつ効率的な方法を本人と模索しながら能力獲得を図った。4.については介助の注意点を本人・家族に指導した。更に、退院後も生活機能と健康状態を良好に保てるよう、オーバーワークにならないよう体に負担のない時間の使い方を考える事や効率的に動作ができる環境設定を行った。加えて、趣味を継続し生きがいを持ち続けられるよう長女との家事の分担を明確化した。このような指導を行い、6ヵ月後、無事目標達成し退院となった。退院後6ヶ月の現在、症例は家事や趣味を行い、妻と安心した生活が送れている。 【まとめ】 高齢社会を迎える中で、本症例のように自らの生活に加え、家族を支援する事が必要なケースは増えることが予想される。その為にも我々作業療法士は対象者のADL能力向上に加え、生活機能・健康状態を良好に保ち安心して生活できるよう活動のバランスや人的・物的環境因子の設定にもきめ細かく対処する事が必要になってくると考える。
Bibliography:275
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2010.0.196.0