荷物挙上動作における軟性コルセット装着の有無が脊椎彎曲角に及ぼす影響 腰痛症患者に対して

【目的】  腰痛症患者の理学療法では,運動療法や物理療法の他,軟性コルセット(以下:コルセット)の装着指導を行うことが多い。先行研究では,コルセットの装着効果が複数報告されているが,脊椎アライメントに及ぼす効果に関する報告は少ない。そこで今回,腰痛症患者を対象に,コルセットの装着の有無による荷物挙上動作時の脊椎彎曲角の変化を比較検討した。 【方法】  対象は,当院通院加療中の腰痛症患者15名(平均年齢78.2±3.9歳)とした。測定肢位は,コルセット装着時および未装着時において両上肢で2kgの重りを入れた箱を把持し,上肢を0°,60°,90°,120°挙上した姿勢とした。測定には,インデックス...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 141
Main Authors 白石, 大地, 前田, 雄一, 古賀, 俊光, 松尾, 奈々, 村田, 伸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2011
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Summary:【目的】  腰痛症患者の理学療法では,運動療法や物理療法の他,軟性コルセット(以下:コルセット)の装着指導を行うことが多い。先行研究では,コルセットの装着効果が複数報告されているが,脊椎アライメントに及ぼす効果に関する報告は少ない。そこで今回,腰痛症患者を対象に,コルセットの装着の有無による荷物挙上動作時の脊椎彎曲角の変化を比較検討した。 【方法】  対象は,当院通院加療中の腰痛症患者15名(平均年齢78.2±3.9歳)とした。測定肢位は,コルセット装着時および未装着時において両上肢で2kgの重りを入れた箱を把持し,上肢を0°,60°,90°,120°挙上した姿勢とした。測定には,インデックス社製のスパイナルマイスを用い,各挙上位の胸椎後彎角および腰椎前彎角を測定した。統計処理は,コルセット装着時および未装着時それぞれの各上肢挙上角の胸椎後彎角と腰椎前彎角の変化量を反復測定分散分析で比較し,さらにScheffeの多重比較検定を実施した。なお,解析にはStatView5.0を用い,統計的有意水準を5%とした。なお,対象者には研究の趣旨と内容を十分に説明し,同意を得た上で研究を開始した。 【結果】  腰椎前彎角は,コルセット未装着時では有意な群間差(F=6.89,p<0.01)が認められ,多重比較検定において上肢挙上角120°で有意(p<0.01)に高値を示した。コルセット装着時では,すべての項目に有意な群間差(F=0.43)は認めなかった。一方,胸椎後彎角は,コルセット未装着時では有意な群間差(F=7.61,p<0.01)が認められ,多重比較検定において上肢挙上角90°で有意(p<0.05)に低値を示した。コルセット装着時では,有意な群間差(F=4.08,p<0.05)が認められ,多重比較検定において上肢挙上角120°で有意(p<0.05)に低値を示した。 【考察】  今回の結果より,腰痛症患者がコルセットを装着することで荷物挙上動作が120°以下であれば腰椎前彎角の増大が抑制されることが明らかとなった。これは,コルセットを装着したことで腹腔内圧が高まり腰部の安定性が増すことにより,腰椎前彎角の変化が抑制されたと推察される。一方,胸椎後彎角は荷物挙上動作が120°で有意に減少することが認められた。これは,コルセット装着時においても荷物挙上動作には胸椎の動きが貢献していると考えられる。このことから,コルセットを装着することで荷物挙上動作を行う際は,腰椎前彎角の維持を図ることができ,胸椎主体の動きで荷物を挙上することが推察された。
Bibliography:141
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2011.0.141.0