JSS-Mの有用性について 転倒、FIMとの関係性

【はじめに】  脳卒中運動機能障害重症度スケール(以下JSS‐M)は、脳卒中患者の運動機能障害の重症度が定量的かつ簡単に評価できるスケールである。これは、再現性、信頼性が保障されていると言われているが、未だ文献的にも少なく、この有用性を発表した研究は数少ない。先行研究でこのJSS‐MはBrunnstrom stageと相関があることが証明されており、また歩行の予後予測に用いることができることも発表されている。  今日、脳卒中患者に限らず、高齢者における転倒は、骨折の原因であり、日常的な活動低下を招くと言われている。そこで今回、この転倒とJSS‐Mの関係性を検討し、JSS‐Mを用いることで、転倒...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 146
Main Authors 山下, 菜穂, 芹川, 節生, 田中, 好乃
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2011
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Summary:【はじめに】  脳卒中運動機能障害重症度スケール(以下JSS‐M)は、脳卒中患者の運動機能障害の重症度が定量的かつ簡単に評価できるスケールである。これは、再現性、信頼性が保障されていると言われているが、未だ文献的にも少なく、この有用性を発表した研究は数少ない。先行研究でこのJSS‐MはBrunnstrom stageと相関があることが証明されており、また歩行の予後予測に用いることができることも発表されている。  今日、脳卒中患者に限らず、高齢者における転倒は、骨折の原因であり、日常的な活動低下を招くと言われている。そこで今回、この転倒とJSS‐Mの関係性を検討し、JSS‐Mを用いることで、転倒の危険予測が可能となるかを検討した。またFIMとの比較検討も行い、ADL能力とも関係があるのか検討したため、以下に報告する。 【対象と方法】  対象は当院通所リハビリテーション(以下通所リハ)を利用されている脳卒中患者26名(男性:13名、女性:13名、平均年齢70.1±9.1歳、利き手が麻痺側:13名、非麻痺側:13名)であり、認知症がなくコミュニケーション可能な方を対象とした。方法はJSS‐MとFIM、転倒回数を評価し、転倒歴は過去1年以内とした。尚、今回は運動機能に着目しているため、FIMの認知項目を除外している。JSS‐Mの評価項目は顔面麻痺、嚥下障害、腕、手、下肢近位筋、足関節、複合運動、歩行の全8項目であり、健常者と最重症者の評点はそれぞれ-0.26~31.29点である。JSS‐Mと転倒回数、FIMをそれぞれ比較検討し、統計処理はスピアマン順位相関係数検定、マン・ホイットニ検定を用い、危険率5%で検定を行った。 【結果】  JSS‐Mスコアは平均8.6±6.0点、転倒回数平均0.7±0.7回(転倒群12名、非転倒群14名)、FIM平均91.9±7.1点であった。JSS‐Mスコアと転倒回数には相関関係が認められ(R=0.51)、JSS‐MとFIMにも高い相関関係が認められた(R=-0.81)。また、転倒群と非転倒群のJSS‐Mスコア(P<0.05)、FIM(P<0.05)にそれぞれ有意差が認められた。 【考察】  脳卒中患者の転倒は、先行報告でもその頻度の高さが言われており、3年半の転倒についての調査報告において、入院患者では35.3%、退院後の患者では66%と転倒頻度は高く、重要な問題であることが考えられる。  今回JSS‐Mスコアと転倒に相関が認められ、転倒群と非転倒群のJSS‐Mにおいて有意差が認められたことから、JSS‐Mスコアにて高い評点であるほど転倒傾向にあり、この評価を行うことで、転倒の危険予測が可能であることが示唆された。また、FIMとも高い相関関係が認められ、転倒群と非転倒群のFIMにおいても有意差が認められたことから、運動機能がADLへ強く影響を及ぼすことが証明された。JSS‐Mは、転倒の危険予測と同時に、患者のADL能力の把握も可能であると考える。今回は通所リハ利用者を対象としたが、脳卒中患者がいる当院でもこのJSS‐Mスコアが利用できると考える。このJSS‐Mは慣れれば2~3分以内で、コメディカルでも評価できるものであると報告があるため、今後当院でも導入することで、病院全体で転倒予防やADL把握が可能となるのではないかと考える。
Bibliography:146
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2011.0.146.0