加齢性難聴
「はじめに」加齢にともなう難聴の発症は50歳代から始まり, 60歳代から急速に感音性難聴が進行すると考えられている. 加齢性難聴は聴器と聴覚中枢全体の加齢変化を背景として, まず4000Hz・8000Hzの高音域を中心に聴覚低下が始まり, 次第に中音域や低音域の聴力も低下してくるパターンが多い. また, 聴覚低下のみならず言葉を聞き取る能力(語音弁別能)も低下してくるため, 騒音環境や多人数での会話, 残響時間の長い部屋での聞き取りなどが困難となる. このように聴力と語音弁別能が低下した高齢者は, 意思疎通に困難を感じ社会生活の不自由度が増加して, 結果的に, 不安や抑鬱状態に陥る危険の高いこ...
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Published in | 医療 Vol. 62; no. 6; pp. 355 - 360 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 国立医療学会
20.06.2008
国立医療学会 |
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Summary: | 「はじめに」加齢にともなう難聴の発症は50歳代から始まり, 60歳代から急速に感音性難聴が進行すると考えられている. 加齢性難聴は聴器と聴覚中枢全体の加齢変化を背景として, まず4000Hz・8000Hzの高音域を中心に聴覚低下が始まり, 次第に中音域や低音域の聴力も低下してくるパターンが多い. また, 聴覚低下のみならず言葉を聞き取る能力(語音弁別能)も低下してくるため, 騒音環境や多人数での会話, 残響時間の長い部屋での聞き取りなどが困難となる. このように聴力と語音弁別能が低下した高齢者は, 意思疎通に困難を感じ社会生活の不自由度が増加して, 結果的に, 不安や抑鬱状態に陥る危険の高いことが知られている. 実際に, 難聴高齢者を対象とした多くの研究において聴力障害と不安, 抑鬱などの精神的健康度の低下が報告されてきた. 高齢者においては難聴の有無にかかわらず, 高齢者をとりまくさまざまな環境因子が高齢者を不安, 抑鬱状態に陥れることが考えられるが難聴があることによって, さらに身体的, 精神的健康の度合いが低下することは容易に想像される. |
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ISSN: | 0021-1699 1884-8729 |
DOI: | 10.11261/iryo1946.62.355 |