変形性膝関節症患者の身体組成に関する研究 インピーダンス法による身体組成上の特徴

【はじめに】  変形性膝関節症(以下、膝OA)は、肥満との関係が指摘されているが、その具体的な研究報告は機能障害のそれに比べて少ない。また、肥満尺度として広く用いられるBody Mass Index(BMI)は、身体組成を反映しないとの報告がある。身体組成とは体脂肪量(FM)と主に筋肉量を反映する除脂肪量(LBM)の2分モデルで構成され、インピーダンス法(BI法)はその算出方法の1つである。今回、膝OA患者のLBM、FM、体脂肪率(%Fat)をBI法により算出し、その身体組成上の特徴を検討した。 【方法】  被検者は当院通院加療中の50歳以上の女性で、膝OA群28名(平均年齢67.9±7.9歳...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 22
Main Authors 前田, 雄一, 村田, 伸, 松本, 嘉美, 中村, 定明, 酒本, 龍郎, 三宮, 貴彦(MD)
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2007
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Summary:【はじめに】  変形性膝関節症(以下、膝OA)は、肥満との関係が指摘されているが、その具体的な研究報告は機能障害のそれに比べて少ない。また、肥満尺度として広く用いられるBody Mass Index(BMI)は、身体組成を反映しないとの報告がある。身体組成とは体脂肪量(FM)と主に筋肉量を反映する除脂肪量(LBM)の2分モデルで構成され、インピーダンス法(BI法)はその算出方法の1つである。今回、膝OA患者のLBM、FM、体脂肪率(%Fat)をBI法により算出し、その身体組成上の特徴を検討した。 【方法】  被検者は当院通院加療中の50歳以上の女性で、膝OA群28名(平均年齢67.9±7.9歳)と非OA群25名(平均年齢64.4±7.8歳)である。膝OA群は当院治療開始後150日以内の者で、両側膝OA(12名)と片側膝OA(16名)で構成された。非OA群は下肢に既往歴がない頚部・上肢疾患患者で構成した。被検者には、事前に本研究の主旨と内容について説明し、同意を得て研究を開始した。なお、体水分量への影響を考慮し、測定は食事直後を避け、排尿後に実施した。BI法による測定はBody Composition Analyzer:X-scan(株.オーワメディカル社)を用いて、LBM、FM、%FATを測定した。X-scanは両手両足へ8個の接触電極を利用した4電極法であり、1~1000kHzの周波数および180μAの測定電流である。なお、この測定器から得られる側定値の信頼性は、重水希釈法による体水分量測定値との比較によってすでに確認されている。統計処理は膝OA群と非OA群の測定値の比較に、対応のないt検定を用いて分析した。 【結果】  膝OA群と非OA群の比較において、体重(p<0.05)、BMI(p<0.05)、%Fat(p<0.01)、FM(p<0.01)に有意差が認められ、膝OA群の測定値が有意に高い値を示した。一方、身長、年齢、LBMには有意差は認められなかった。 【考察】  本研究結果によると、膝OA群の体重、BMI、%Fat、FMは、非OA群の値より有意に高い値を示した。このことから、膝OA群で体重やBMIが非OA群より高い理由として、体脂肪量が増加していることが示唆される。一方、LBMには膝OA群と非OA群の値に有意差が認められないことから、膝OA群の筋肉量が必ずしも減少している訳ではない可能性が考えられた。これらの知見から、膝OAの理学療法は従来からの膝周囲筋の筋力トレーニングに偏らず、持久的な運動により脂肪を減少させるようなトレーニングの重要性が示唆された。
Bibliography:147
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2007.0.22.0