臨床経過より推測した前立腺癌の初期像 潜在癌との関係の解明の試み

前立腺潜在癌と顕在癌の関係を解明するために, 前立腺癌の進展を時間の経過, 組織学的分化度, 腫瘍量の3つの観点から解析した. 具体的には次の3つの項目について検討した. 対象は stage A 20例, stage B 35例, stage C 46例, stage D 114例の合計215例である. (1) stage A癌の臨床病理所見の解析では, A1癌には癌死は認めず, A2癌では, 43%の症例に癌死が認められた. stage A癌は定義から考えて潜在癌ではあるが, A1癌とA2癌を明確に区別すべきであり, A1癌は潜在癌のままで経過する可能性が高いが, A2癌は顕在癌の出発点と考...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 79; no. 7; pp. 1193 - 1201
Main Authors 高井, 計弘, 垣添, 忠生, 鳶巣, 賢一, 田中, 良典, 手島, 伸一, 岸, 紀代三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 20.07.1988
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Summary:前立腺潜在癌と顕在癌の関係を解明するために, 前立腺癌の進展を時間の経過, 組織学的分化度, 腫瘍量の3つの観点から解析した. 具体的には次の3つの項目について検討した. 対象は stage A 20例, stage B 35例, stage C 46例, stage D 114例の合計215例である. (1) stage A癌の臨床病理所見の解析では, A1癌には癌死は認めず, A2癌では, 43%の症例に癌死が認められた. stage A癌は定義から考えて潜在癌ではあるが, A1癌とA2癌を明確に区別すべきであり, A1癌は潜在癌のままで経過する可能性が高いが, A2癌は顕在癌の出発点と考えられた. (2) 顕在癌の中で長期生存した群と早期に癌死した群の初診時の組織学的分化度を検討した. 長期生存例に高分化型癌が, 早期癌死例に低分化型癌が多い傾向がみられた. 長期生存例でも, stage B, C, Dと進むにつれ高分化型癌が減少し, 低分化型癌が増加する傾向がみられた. (3) 初診時既に転移のある症例とない症例について臨床病期T分類を比較すると初診時すでに転移のあった症例では, より腫瘍が大きいもの, また組織学的分化度では低分化型癌のものが多くみられた. 以上より, 潜在癌から顕在癌への進展に重要なことは, 腫瘍容量の増加と, 組織の低分化型細胞の占める割合の増加の2点と考えられた.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.79.7_1193