身体組成計で測定した筋肉量は大腿四頭筋筋力を反映するか 変形性膝関節症の女性高齢患者における検討

【目的】 変形性膝関節症(以下、膝OA)は、膝関節疼痛、関節可動域制限、膝周囲の筋力低下を主症状とする高齢期に多い疾患である。特に、大腿四頭筋は早期より筋力低下を引き起こし、膝OAを進行させる。そのため運動療法では、膝関節に作用する力学的負荷を軽減させるため、大腿四頭筋筋力の再獲得が重要とされる。筋の評価は、徒手筋力検査(以下、MMT)が器具を使用せず簡便な方法として実施されるが、検査の客観性については疑問視されるところもある。また、CTや超音波画像を用いた筋断面積と筋活動の研究が多く散見されるが、臨床場面では、画像を用いて評価することは困難なことが多い。そのため、身体組成計で測定した筋肉量が...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 93
Main Authors 中村, 定明, 村田, 伸, 前田, 雄一, 松本, 嘉美, 井上, 芳典, 藤野, 英己, 大田尾, 浩, 三宮, 貴彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2008
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Summary:【目的】 変形性膝関節症(以下、膝OA)は、膝関節疼痛、関節可動域制限、膝周囲の筋力低下を主症状とする高齢期に多い疾患である。特に、大腿四頭筋は早期より筋力低下を引き起こし、膝OAを進行させる。そのため運動療法では、膝関節に作用する力学的負荷を軽減させるため、大腿四頭筋筋力の再獲得が重要とされる。筋の評価は、徒手筋力検査(以下、MMT)が器具を使用せず簡便な方法として実施されるが、検査の客観性については疑問視されるところもある。また、CTや超音波画像を用いた筋断面積と筋活動の研究が多く散見されるが、臨床場面では、画像を用いて評価することは困難なことが多い。そのため、身体組成計で測定した筋肉量が大腿四頭筋筋力と相関を認めるならば、膝OA患者の大腿四頭筋筋力を簡便な方法にて推測できると考える。そこで今回、膝OA高齢者の大腿四頭筋筋力と筋肥厚および身体組成計での筋肉量との関係について検討した。 【対象と方法】 対象は、当院に通院加療中の膝OA患者のうち、65歳以上の女性高齢者で、研究に協力が得られた32名(平均年齢73.9±5.7歳)である。調査は、大腿四頭筋筋力および筋肥厚と筋肉量を測定した。大腿四頭筋筋力は、ハンドヘルドダイナモメーター(ANIMA社製μTasF1)を用いて端座位、膝関節90°屈曲位で左右の等尺性収縮筋力を測定した。大腿四頭筋の筋肥厚は、超音波皮下脂肪計(ビジファットEU2002B)を用いた。測定肢位は、長座位、膝伸展位での大腿四頭筋収縮時に、上前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結んだ線上の1/2(大腿直筋と中間広筋)の部位における左右の筋厚を測定した。身体組成計による筋肉量の測定は、デュアル周波数体組成計(TANITA社製 DC-320)を用いて測定した。統計処理は大腿四頭筋筋力、筋肥厚、筋肉量の測定値の関連性についてピアソンの相関係数を用いて検討した。 【結果】 左右の大腿四頭筋筋力、左右の筋肥厚ならびに筋肉量の相関分析の結果、有意な相関が認められたのは、左右の大腿四頭筋筋力と筋肥厚との相関(右側r=0.58,p<0.01;左側r=0.61,p<0.01)および左側の筋肥厚と筋肉量との相関(r=0.35,p<0.05)であった。右側の筋肥厚と筋肉量(r=0.28)および左右の大腿四頭筋筋力と筋肉量(右側r=0.06;左側r=0.13)との間には有意な相関は認められなかった。 【考察】 筋断面積は筋力と高い相関があり、筋肉厚は筋断面積と相関が高いため筋力と高い相関を示すとされる。今回の結果も、大腿四頭筋筋力と筋肥厚とは有意な相関が認められた。一方、身体組成計により計測された筋肉量は大腿四頭筋筋力を反映していなかった。これらの結果から、膝OAの女性患者の筋力を測定するには、身体組成計で計測した筋肉量に比べ、超音波画像での筋肥厚の評価の方が有効であることが示唆された。
Bibliography:93
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2008.0.93.0