肝動脈塞栓療法後に輸血後遅発型溶血反応による黄疸増強を認めた, 副腎転移を伴う肝細胞癌の一例

原発巣にのみ肝動脈塞栓術 (TAE) を加え, その後の輸血によりJkb抗体による遅発型溶血反応を発症した, 62歳男性の副腎転移を伴う肝硬変合併進行肝細胞癌を経験した.TAE2日後濃厚赤血球を2単位ずつ2日間輸血し, その1週後に急速な発熱と黄疸増強に伴い貧血が増強し, 総ビリルビンで13mg/dl, Hb5.7g/dlまで増悪した.プレドニソロンにより黄疸, 貧血ともに改善した.ハプトグロブリン低値, 間接ビリルビン優位のビリルビン上昇などは肝不全でもみられるため, 肝不全準備状態の患者では輸血後の黄疸増強において遅発型溶血反応を念頭に置くべきと考えられた.また本患者における副腎転移に対し...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 50; no. 4; pp. 381 - 387
Main Authors 石嶋, 秀行, 星野, 秀樹, 佐藤, 賢, 飯島, 浩宣, 松井, 正之, 大塚, 敏之, 青木, 純, 森, 昌朋, 田中, 良樹, 小島, 明, 高山, 尚, 吉田, 佐知子, 押本, 浩一, 高木, 均, 山田, 正信
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 北関東医学会 01.07.2000
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1343-2826
1881-1191
DOI10.2974/kmj.50.381

Cover

More Information
Summary:原発巣にのみ肝動脈塞栓術 (TAE) を加え, その後の輸血によりJkb抗体による遅発型溶血反応を発症した, 62歳男性の副腎転移を伴う肝硬変合併進行肝細胞癌を経験した.TAE2日後濃厚赤血球を2単位ずつ2日間輸血し, その1週後に急速な発熱と黄疸増強に伴い貧血が増強し, 総ビリルビンで13mg/dl, Hb5.7g/dlまで増悪した.プレドニソロンにより黄疸, 貧血ともに改善した.ハプトグロブリン低値, 間接ビリルビン優位のビリルビン上昇などは肝不全でもみられるため, 肝不全準備状態の患者では輸血後の黄疸増強において遅発型溶血反応を念頭に置くべきと考えられた.また本患者における副腎転移に対しては, 肝予備能低下と原発巣の進行度を考慮して, 無治療で7ヶ月経過しているが発育は緩除であったことから, 根治療法不能の肝硬変合併肝細胞癌に対する治療方針決定には肝予備能を第一の予後規定因子と考え, 癌死以前に肝不全死を招来せしめぬように配慮すべきと考えられた.
ISSN:1343-2826
1881-1191
DOI:10.2974/kmj.50.381