静注用メタンスルホン酸コリスチンナトリウム (メタコリマィシン) に関する研究 第1報吸収, 分布ならびに排泄について

薬物の作用機序を解明する1方法として, 化学構造-活性相関々係 (Structure-activity-relationship: SAR) からみた研究がなされてきた。この方法には, 2つの大きな目標が存在する。その第1は, 類似した薬理活性をもつ多数の薬物について, それらに相互に共通する活性の構造分子を見出し, 薬物と受容体の反応様式を化学的に究明しようとするものである。第2の目的は, 第1の目的とは逆に, 1個の薬物について検討するもので, 薬理活性をもつ最小部分の構造式に種々の反応基をつけ, SARを見出し, さらにより活性の強いものを合成するという意義をもつている。この両者は, 研...

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Published inThe Japanese Journal of Antibiotics Vol. 27; no. 1; pp. 8 - 14
Main Authors 山田, 重男, 馬屋原, 敬民, 三橋, 矩昭, 若林, 一夫, 平塚, 幸蔵, 定岡, 啓三, 中沢, 進, 渡辺, 修, 佐藤, 肇, 松本, 朋徳, 野田, 伊津子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本感染症医薬品協会 25.02.1974
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Summary:薬物の作用機序を解明する1方法として, 化学構造-活性相関々係 (Structure-activity-relationship: SAR) からみた研究がなされてきた。この方法には, 2つの大きな目標が存在する。その第1は, 類似した薬理活性をもつ多数の薬物について, それらに相互に共通する活性の構造分子を見出し, 薬物と受容体の反応様式を化学的に究明しようとするものである。第2の目的は, 第1の目的とは逆に, 1個の薬物について検討するもので, 薬理活性をもつ最小部分の構造式に種々の反応基をつけ, SARを見出し, さらにより活性の強いものを合成するという意義をもつている。この両者は, 研究の性質からみて, どちらが先行するということではなく, 平行して進められるのが普通である。 メタンスルホン酸コリスチンナトリウム (メタコリマイシン (CL-M)) は, ポリミキシン系抗生物質で, SARの研究中に東海林1) らによつて見出された薬物であり, コリスチン塩基の遊離アミノ基 (-NH2) をメタンスルホン酸化 (-NHCH2SO2) することによつて得られたものである。ポリミキシン系抗生物質に関するSARの報告では, 栗原2) らは, コリスチンの遊離-NH2基をアルキル化し, またN-アルキリデン化したものを多数合成して, それらについて構造-抗菌活性を比較し, その結果, N-アルキル体は, N-アルキリデン体より抗菌作用は強く, N-アルキル体化合物の中でも, 置換基の炭素数によつて活性は異なり, 炭素数が大きいものほど抗菌力は減弱されるという。さらに横田3) は, 循環器系に対するこれら薬物の薬理作用を比較し, 置換基の炭素数の増加は降圧を増強するという。以上は, コリスチン塩の遊離-NH2のN-アルキルおよびアルキリデンコリスチン系物質について今まで知られているSARである。コリスチン塩をメタンスルホン酸化したばあいは, 塩類にくらべ毒性は軽減され4), 胆汁, 血清などによつて不活化され難いという数々の利点を備えているという5, 6) 。本薬の吸収, 排泄に関する報告はまだ少なく, SCHWARTZ5) らおよび西浦7) らの報告では, 筋注では速やかに血中に移行し, 1時間後には尿中に排泄されるという。詳細な経時的推移については不明である。 今回, 著者らは, CL-Mの吸収, 排泄, 臓器内分布を明らかにするため犬, ラットおよびヒトについて経時的な変化を詳細に検討したので, その成績を報告する。
ISSN:0368-2781
2186-5477
DOI:10.11553/antibiotics1968b.27.8