障がい者スポーツにおいて遠征時ADLに関わるPT・OTとしての役割 ウィルチェアーラグビーでの経験を通して

【はじめに】ウィルチェアーラグビーとは、頸髄損傷や切断、脳性麻痺等で四肢に障がいを持つ者が、競技用車椅子を使用して行う国際的なチームスポーツである。沖縄県のウィルチェアーラグビーチームには、重度の身体障がいを有する選手が在籍しているため、自宅でのADL自立度と、県外遠征中でのADL自立度に大きな差が見られる。遠征では、飛行機の移動から試合におけるコンディショニング、大会期間中の生活をチームスタッフで介助を行う。その中でこれまでの遠征において、選手の病態や身体機能を理解した上で環境に応じたADLの介助に、理学療法士(以下、PT)、作業療法士(以下、OT)として関わってきたことについて報告する。【...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 241
Main Authors 川端, 奈季, 狩俣, 寛史, 満名, 美早, 宮里, 将平, 島袋, 恵, 川端, 晋也, 又吉, 達
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
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Summary:【はじめに】ウィルチェアーラグビーとは、頸髄損傷や切断、脳性麻痺等で四肢に障がいを持つ者が、競技用車椅子を使用して行う国際的なチームスポーツである。沖縄県のウィルチェアーラグビーチームには、重度の身体障がいを有する選手が在籍しているため、自宅でのADL自立度と、県外遠征中でのADL自立度に大きな差が見られる。遠征では、飛行機の移動から試合におけるコンディショニング、大会期間中の生活をチームスタッフで介助を行う。その中でこれまでの遠征において、選手の病態や身体機能を理解した上で環境に応じたADLの介助に、理学療法士(以下、PT)、作業療法士(以下、OT)として関わってきたことについて報告する。【調査対象】平成27年度の沖縄県ウィルチェアーラグビーチーム登録選手7名を対象にADLについて聞き取り調査を行った。内訳は頸髄損傷4名、先天性多発性関節拘縮症1名、シャルコーマリートゥース病1名、関節弛緩症1名で、平均年齢は36.2歳である。今回、自宅でのADLと遠征先でのADLを機能的自立度評価表FIMを用いて評価を行った。【PT・OTとしての関わり方】平成27年度チーム登録しているリハスタッフ数は10名で、内PT9名、OT1名が在籍している。活動頻度としては、週1回の練習参加及び年2~3回の県外遠征への帯同を行っている。FIMにおいて、自宅での平均点数は107.4点、遠征先での平均点数は92.7点であった。自宅においては本人の能力に応じて住宅改修がなされているため自立度が高くなっている。遠征先での大きな減点項目としては、移乗動作(ベッド・トイレ・浴室間)、入浴動作、整容動作があげられた。当チームにおいて、自宅と遠征先でのFIMが高い4選手に関しては、環境の変化でADLが左右されることは少ないが、重度の身体障がいを有する3選手においては、自宅と遠征先でのADLにおける自立度において大きな差がみられた。内容としては、飛行機やバスなどの乗物移動の際、車椅子から座席への移乗において介助を要した。宿泊施設では、バリアフリールームの数に限りがあるためほとんど使用することがなく、スタンダードルームを使用するが、段差や入り口の広さ、ベッド周囲の手すりの設置がなく自立できる環境が整っていない。そのため、室内での導線の確保やベッド配置など、環境設定を行っている。また、トイレ・浴室内での移動や動作が自立できる環境が整っていないため、すべての項目において介助を要している。排尿に関しては、導尿の準備から施行、後片付け、尿の廃棄まで介助で行っている。更衣動作は、上衣の着脱はセッティングにてある程度自立できているが、下衣はギャッジアップのできないベッド環境であり、介助を要することがほとんどである。セルフケアの実施時間を短縮するため、選手とスタッフを同室にするなどの部屋の割り振りにも配慮している。【まとめ】遠征先では、自宅でのADL環境に近づけることが難しいため、重度な身体障がいを有する選手に関しては、ADL介助に関わることは必須である。チームスタッフとして病態や身体機能を理解した上で、遠征先での環境の変化が選手の負担にならず、ベストコンディションで試合に挑めるよう継続して関わっていく必要があると考える。【倫理的配慮,説明と同意】本調査および発表において、ヘルシンキ宣言に則り当チームにおける選手・スタッフに十分に説明し同意を得た。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2016.0_241