当院における人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防の啓発活動の取り組み 人工呼吸器装着患者の背上げ角度における実態調査
【はじめに】人工呼吸器関連肺炎(以下VAP)の発症は、高い罹患率と死亡率が報告されており、人工呼吸器管理時において原疾患の治療と並行して行わなければならない重要なケアであり、細心の注意と予防が必要である。VAPの予防策として、人工呼吸器バンドルの中の1つに頭位挙上30°が推奨されているが、臨床現場における背上げ角度の実態について明らかにされていないのが現状である。そこで今回、頭位拳上30°を他職種に啓発するために、院内でポジショニングについての研修会を呼吸ケアチーム(以下RCT)主催にて開催し、さらにその後、頭位拳上30°(bedの背上げ)の手順を記したシオリを各bedsideに掲示した。今回...
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Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 137 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
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九州理学療法士・作業療法士合同学会
2016
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Summary: | 【はじめに】人工呼吸器関連肺炎(以下VAP)の発症は、高い罹患率と死亡率が報告されており、人工呼吸器管理時において原疾患の治療と並行して行わなければならない重要なケアであり、細心の注意と予防が必要である。VAPの予防策として、人工呼吸器バンドルの中の1つに頭位挙上30°が推奨されているが、臨床現場における背上げ角度の実態について明らかにされていないのが現状である。そこで今回、頭位拳上30°を他職種に啓発するために、院内でポジショニングについての研修会を呼吸ケアチーム(以下RCT)主催にて開催し、さらにその後、頭位拳上30°(bedの背上げ)の手順を記したシオリを各bedsideに掲示した。今回その研修会前後とシオリ掲示後での効果について検証したので報告する。【方法】対象は平成25年12月~平成26年10月の期間に人工呼吸器が装着され、RCT委員がラウンドした181件中、死亡例及び非侵襲的陽圧換気療法例を除く126件で、ラウンド時にBedの背上げ角度が調査できた104件とした。検証方法は研修会前、研修会後~シオリ掲示前(研修会後)及びシオリ掲示後の三つの期間に区分して、それぞれの期間での背上げ角度の平均値、背上げ角度30°達成率を求め比較した。統計学的処理はいずれも一元配置の分散分析を行い、その後多重比較検定のTukey法を採用した。なお、有意水準を5%未満とした。【結果】背上げ角度の期間別比較では研修会前は16.1±6.1°、研修会後は23.9±7.6°、シオリ掲示後は25.0±7.3°であった。研修会後とシオリ掲示後の角度は研修会前に比べ有意(いずれもp<0.001)に拳上していたが、研修会後とシオリ掲示後間では有意差は認めなかった。また、背上げ角度30°達成率においては、研修会前は2.4%、研修会後は34.0%、シオリ掲示後は43.8%であった。【考察】VAPは周術期呼吸管理において最も多い感染症の1つとされ、挿管患者の9~27%に発生し、VAP合併患者の死亡率は30~76%と報告されている。VAP予防策として各学術的な組織から人工呼吸器バンドルとして頭位挙上30°が推奨されており、VAP発生頻度が仰臥位に比べて有意に低下すると報告されている。今回の調査結果より、研修会開催以降の背上げ角度の平均値には院内で一様の向上が確認できたものの、背上げ角度30°の達成率は40%程度と、目標とする30°には達していない結果となった。VAP発症予防は個人の実施だけで予防することは困難であり、各病棟スタッフと連携・協力して予防に努めることが重要であると考える。今後も引き続き、調査集計しながら人工呼吸器装着患者において頭位拳上30°が確実になされるように啓発活動に従事し、VAPの予防に努めていきたいと考える。【倫理的配慮,説明と同意】今回の研究において患者データを使用する旨を説明し同意を得ている。 |
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ISSN: | 0915-2032 2423-8899 |
DOI: | 10.11496/kyushuptot.2016.0_137 |