加熱式タバコの喫煙者の尿中コチニン値の評価:ELISA法の有効性

目的 尿中コチニン濃度は,喫煙者の喫煙状況を客観的に評価するための信頼性の高いバイオマーカーとして広く利用されている。その測定には,液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS法)やガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS法)といった高精度な手法が主に使用されているが,高額な機器や専門的な分析技術を要するため大規模調査には不向きである。一方,LC-MS法とGC-MS法に匹敵する精度を持つ,簡便かつ低コストの酵素免疫測定法(ELISA法)が注目されている。ELISA法は紙巻タバコの喫煙者の尿中コチニン値の評価で有用性が示されているが,加熱式タバコへの適用については検討されていない。本研究は,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本公衆衛生雑誌 p. 24-141
Main Authors 姜 英, 垣内 紀亮, 河井 一明, 李 云善, 大和 浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2025
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.24-141

Cover

More Information
Summary:目的 尿中コチニン濃度は,喫煙者の喫煙状況を客観的に評価するための信頼性の高いバイオマーカーとして広く利用されている。その測定には,液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS法)やガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS法)といった高精度な手法が主に使用されているが,高額な機器や専門的な分析技術を要するため大規模調査には不向きである。一方,LC-MS法とGC-MS法に匹敵する精度を持つ,簡便かつ低コストの酵素免疫測定法(ELISA法)が注目されている。ELISA法は紙巻タバコの喫煙者の尿中コチニン値の評価で有用性が示されているが,加熱式タバコへの適用については検討されていない。本研究は,加熱式タバコ使用者の尿中コチニン濃度を測定し,ELISA法がLC-MS法と同等に有効であるかを検証することを目的とした。方法 某事業場で勤務する労働者を対象に,平日の昼休み中に尿を採取した。「非喫煙者」11人,「紙巻タバコのみの喫煙者」13人,「加熱式タバコのみの喫煙者」9人の計33人を解析対象とし,尿中コチニン濃度をLC-MS法およびELISA法で測定した。両手法の測定値の相関をピアソン相関係数で評価し,一致性をブランド・アルトマンプロットで検討した。結果 ELISA法とLC-MS法の測定結果は高い相関を示し(紙巻タバコのみ喫煙者:r=0.84,P<0.001;加熱式タバコのみの喫煙者:r=0.96,P<0.001),ブランド・アルトマンプロットでは概ね高い一致性が得られ,両手法間のデータの90.9%は一致限界内に収まった。結論 ELISA法は,紙巻タバコのみならず加熱式タバコ使用者の尿中コチニン値の評価においても有用であることが示された。その簡便性と低コスト性より,大規模疫学調査や職場での喫煙対策における応用が期待される。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.24-141