中国吉林省居住民における歯の咬耗と顎関節症状に関する実態調査

歯の咬耗と顎関節症状の関連性に関する臨床的研究は極めて少ない。そこで我々は, 顎関節機能障害の発症機序を探る手がかかりを得ることを目的として, 歯科医療機関がない中国北方の農村において, 雑穀を主食とする住民532名 (15歳-77歳) を対象に歯および顎関節の状態を調査し歯の咬耗と顎関節症状について検討した。その結果, 1. 一人平均未処置歯数は0.5本, 一人平均喪失歯数は0.2本, 一人平均処置歯数は0.1本で, 不正咬合のある者は12名 (2.3%), ない者は520名 (97.7%) であった。 2. 歯の咬耗は532名中530名 (99.6%) (軽度咬耗: 45.7%, 高度咬耗...

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Published in日本顎関節学会雑誌 Vol. 11; no. 3; pp. 156 - 162
Main Authors 駒井, 伸也, 高橋, 和裕, 菅原, 由美子, 丸茂, 町子, 田口, 喜雄, 笹野, 高嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 20.12.1999
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Summary:歯の咬耗と顎関節症状の関連性に関する臨床的研究は極めて少ない。そこで我々は, 顎関節機能障害の発症機序を探る手がかかりを得ることを目的として, 歯科医療機関がない中国北方の農村において, 雑穀を主食とする住民532名 (15歳-77歳) を対象に歯および顎関節の状態を調査し歯の咬耗と顎関節症状について検討した。その結果, 1. 一人平均未処置歯数は0.5本, 一人平均喪失歯数は0.2本, 一人平均処置歯数は0.1本で, 不正咬合のある者は12名 (2.3%), ない者は520名 (97.7%) であった。 2. 歯の咬耗は532名中530名 (99.6%) (軽度咬耗: 45.7%, 高度咬耗: 53.9%) にみられ, 加齢とともに進行し, その程度に性差はみられなかった。 3. 臨床診査により顎関節部疼痛を認めた者は全くなく, 顎関節雑音は25名 (4.7%), 開口障害は1名に認められたに過ぎなかった。すなわち, 顎関節機能障害のある者は532名中26名 (4.9%), ない者は506名 (95.1%) であった。 4. 顎関節雑音の出現率は加齢に伴い増加した。 5. 顎関節雑音は歯の咬耗が軽度な者 (2.0%) よりも高度な者 (7.0%) に多くみられた。 以上より, う歯, 歯の喪失が少なく, 加齢に伴って進行する歯の咬耗がみられる環境では顎関節機能障害は発現し難いことが示唆された。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu1989.11.156