1.なぜ高齢者における「食べること」は「臨床倫理」の重要な関心事なのか 意思決定能力が低下した高齢者の「自律」を支援するために
高齢者の様々な疾患において摂食嚥下障害が起こり,今後の治療方針について倫理的ジレンマが生じる.本人に意思決定能力がある時には自己決定の権利が保障されるが,それが無いと評価された場合には,家族等による代理判断が行われる.しかし,実際,意思決定能力が境界領域の多くの高齢者がおり,それらの人々からたやすく自己決定の権利を奪ってしまうことは倫理的に問題である.意思決定能力の評価を「独りで自己決定できること」という「個別的な自律の概念」から,「関係性や共感を軸にした自律の概念」へという発想の転換が必要である....
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 61; no. 3; pp. 280 - 284 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.07.2024
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Summary: | 高齢者の様々な疾患において摂食嚥下障害が起こり,今後の治療方針について倫理的ジレンマが生じる.本人に意思決定能力がある時には自己決定の権利が保障されるが,それが無いと評価された場合には,家族等による代理判断が行われる.しかし,実際,意思決定能力が境界領域の多くの高齢者がおり,それらの人々からたやすく自己決定の権利を奪ってしまうことは倫理的に問題である.意思決定能力の評価を「独りで自己決定できること」という「個別的な自律の概念」から,「関係性や共感を軸にした自律の概念」へという発想の転換が必要である. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.61.280 |