日豪における外国とつながる人々の言語レパートリーの多様性とアイデンティティの事例研究 言語能力・使用の自己評価の分析と言語政策への示唆

グローバル化にともない移民の背景は「超多様性」(Vertovec 2007)と呼ばれ、社会言語学的には、個人の言語レパートリーの多様性が注目されている。本研究では、こうした外国につながる人々が、ホスト社会との接触経験の中で、主流言語の能力及び使用に対してどのように自己評価し、またアイデンティティを形成しようとしているかをインタビューの語りから探り、彼らの言語レパートリー形成の一端を明らかにすることを目的とする。調査は日豪に住む外国につながる人々10名を対象にインタビューを行い、自己評価の語りと、さらにアイデンティティに関する語りについても抽出して分析を行った。調査の結果、自己評価の語りでは、日...

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Published in言語政策 Vol. 19; no. 1; pp. 19_17 - 19_30
Main Authors 倉田, 尚美, 村岡, 英裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本言語政策学会 31.03.2023
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ISSN1880-0866
2758-500X
DOI10.57525/jalpjournal.19.1_19_17

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Summary:グローバル化にともない移民の背景は「超多様性」(Vertovec 2007)と呼ばれ、社会言語学的には、個人の言語レパートリーの多様性が注目されている。本研究では、こうした外国につながる人々が、ホスト社会との接触経験の中で、主流言語の能力及び使用に対してどのように自己評価し、またアイデンティティを形成しようとしているかをインタビューの語りから探り、彼らの言語レパートリー形成の一端を明らかにすることを目的とする。調査は日豪に住む外国につながる人々10名を対象にインタビューを行い、自己評価の語りと、さらにアイデンティティに関する語りについても抽出して分析を行った。調査の結果、自己評価の語りでは、日豪の相違よりも類似の傾向の方が強いことが明らかになった。またアイデンティティについての語りでは、ホスト社会との接触経験に密接に関連しているだけでなく、将来の言語レパートリー形成の方向が予想できることがわかった。このような個人レベルの言語レパートリーの調査は、移民に対する言語政策の具体的な指針を検討していく上で、重要な示唆を与えるであろう。
ISSN:1880-0866
2758-500X
DOI:10.57525/jalpjournal.19.1_19_17