介護、医療の連携により生活を支える 麻痺側下肢に対しボツリヌス療法を施工した一症例
【はじめに】近年、地域包括ケアシステムの構築とともに、在宅生活を支えるためには医療・介護の連携が重要であるといわれている。今回、訪問リハビリテーション(以下:訪問リハ)利用者に対し、介護・医療が連携した結果、身体機能の改善に伴い日常生活にも変化が見られた。その為、若干の知見を含めここに報告する。【症例紹介】50歳代女性、BMI28.8。診断名は脳出血(左被殻)、両股OA(末期)、両膝OA。現病歴として、平成25年4月脳出血発症、11月より訪問リハ開始となる。介護度は要介護2、通所介護(以下:DS)、訪問リハを利用している。Br.stageは上下肢ともⅢ、MASは下肢伸展3、屈曲3。運動時、荷重...
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Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 66 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州理学療法士・作業療法士合同学会
2016
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Summary: | 【はじめに】近年、地域包括ケアシステムの構築とともに、在宅生活を支えるためには医療・介護の連携が重要であるといわれている。今回、訪問リハビリテーション(以下:訪問リハ)利用者に対し、介護・医療が連携した結果、身体機能の改善に伴い日常生活にも変化が見られた。その為、若干の知見を含めここに報告する。【症例紹介】50歳代女性、BMI28.8。診断名は脳出血(左被殻)、両股OA(末期)、両膝OA。現病歴として、平成25年4月脳出血発症、11月より訪問リハ開始となる。介護度は要介護2、通所介護(以下:DS)、訪問リハを利用している。Br.stageは上下肢ともⅢ、MASは下肢伸展3、屈曲3。運動時、荷重時に右下肢に痛みがみられていた。また両股・膝関節にROM制限がみられ、基本動作は把持物使用して自立、自宅内は車椅子での生活が主であった。BI70点。【経過】訪問リハ開始時、入浴以外のADLは家族介助も得ながら自分で行っており、IADLは部分的に可能。参加面では、家族と外出・外食などを行っていた。その後徐々に右下肢筋緊張が亢進し、痛みも増強した。また両下肢のROM制限や左股関節の疼痛増大がみられた。体重も10㎏増加し、左下肢の負担も増加していた。そこで当院非常勤のリハビリテーション医(以下:リハDr)に相談、A病院整形外科を受診し、右股関節に対しTHAの検討を行った。しかし、痙性が強く脱臼の可能性が高いと判断された。その後体重の変化は見られず、介護サービス担当者間で相談するも、大きく活動量も増やせていなかった。再度リハDrと検討し、B病院の整形外科を受診することとなった。そこで右膝関節に対し筋切離術の検討を行ったが、膝関節周囲の軟部組織の癒着などが強い為見送られた。さらにリハDrと検討し、右ハムストリングス、下腿三頭筋に対しボツリヌス療法を行うこととなった。【結果】ボツリヌス療法後、下肢伸展のMASは2となり、運動時・荷重時の痛みも軽減した。また装具装着や歩行・ADLでも動作がスムーズに行えるようになった。【考察】本症例は、在宅生活を継続していく上で徐々に右下肢筋緊張亢進、左下肢の負担増大等がみられ、介護度が増加すると推測された。そこで左下肢負担軽減・右下肢疼痛軽減を図るために、介護・医療間の連携が必要ではないかと考えた。まず医療との連携として、リハDrに症状や経過報告等を行い、疼痛軽減を目的に何度も検討を重ね、右下肢に対しボツリヌス療法を行う事となった。同時に介護間での連携として、ケアマネージャー(以下:CM)やDS担当者と情報共有を行い、活動量増加を図った。ボツリヌス療法後、筋緊張緩和・疼痛軽減に伴い、介護サービス時に活動量増加が図れた。本症例は入院中より主治医だけでなく副主治医として週1回リハDrに診てもらっており、退院後も相談を行っていた。その為、DrとCMが直接情報共有を行いにくい状態であった。そこで今回は、両者と情報共有しやすい立場であったセラピストが両者の連絡役となった。そのことで連携を行う際に、訪問リハが橋渡しの役割を担え、連携を図りやすかったのではないかと考える。地域包括ケアでは自分らしい生活を続ける為には、地域における医療・介護の関係機関が連携する事が必要としている。この事から連携を図る事は重要であると言える。今回、介護・医療間、介護サービス間で連携を図った事で、現在でも身体機能・活動・参加を維持することが出来ている。【おわりに】今後も介護サービス間で情報共有をおこない、必要に応じて介護・医療間の連携も図る事で在宅生活を支えていく事が重要であると考える。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、説明と同意を得た。 |
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ISSN: | 0915-2032 2423-8899 |
DOI: | 10.11496/kyushuptot.2016.0_66 |