過カルシウム尿症を伴う尿路結石症に対するフィチン療法の研究 1. 基礎的検討

米糠から抽出されたフィチン, フィチン酸ナトリウム, フィチン酸マグネシウム及び臨床用に試作されたフィチン顆粒を用いて各々のカルシウム結合作用を比較検討し, フィチンのカルシウムキレート作用について考察をおこなうと共にエチレンジアミン四酢酸 (EDTA) 及びクェン酸におけるその作用との比較をもおこなった. 又, ラット翻転腸管を用いてカルシウムの吸収に対するフィチン効果も検討し以下の結果が得られた. 米糠フィチン, フィチン顆粒, フィチン酸ナトリウム及びフィチン酸マグネシウムの4物質のカルシウム結合作用はフィチン濃度依存的に増加し, その作用はフィチン酸ナトリウムが最も優れており, 他の3...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 77; no. 1; pp. 5 - 11
Main Authors 戎野, 庄一, 森本, 鎮義, 吉田, 利彦, 深谷, 俊郎, 安川, 修, 大川, 順正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 1986
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Summary:米糠から抽出されたフィチン, フィチン酸ナトリウム, フィチン酸マグネシウム及び臨床用に試作されたフィチン顆粒を用いて各々のカルシウム結合作用を比較検討し, フィチンのカルシウムキレート作用について考察をおこなうと共にエチレンジアミン四酢酸 (EDTA) 及びクェン酸におけるその作用との比較をもおこなった. 又, ラット翻転腸管を用いてカルシウムの吸収に対するフィチン効果も検討し以下の結果が得られた. 米糠フィチン, フィチン顆粒, フィチン酸ナトリウム及びフィチン酸マグネシウムの4物質のカルシウム結合作用はフィチン濃度依存的に増加し, その作用はフィチン酸ナトリウムが最も優れており, 他の3者はほぼ同等の作用が示された. 著者らのおこなった実験系ではフィチン酸ナトリウム及び米糠フィチン等がEDTA及びクェン酸よりもカルシウム結合能が強いという結果が得られ, フィチン酸ナトリウム1mMに約3mMのカルシウムキレート作用があるものと考えられた. 米糠フィチン顆粒の胃液による溶解でのカルシウム結合作用の検討において通常の胃液では0.1N塩酸での溶解時とほぼ同様の作用を示した. ラット翻転腸管を用いて米糠フィチンが腸管内のカルシウム吸収を抑制することも示し, フィチンは腸管内での優れたカルシウム吸収抑制物質であるとの結論が得られ, フィチン療法の臨床応用の可能性が示唆された.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.77.1_5