反復性低頻度経頭蓋磁気刺激と集中的作業療法の併用療法の効果 麻痺手の機能向上がADLに汎化された症例

【はじめに】近年,脳神経の再構築による片麻痺上肢機能向上を目的とした,新たなリハビリテーション手法として,低頻度反復性経頭蓋磁気刺激(以下,rTMS)が注目されている. rTMSと集中的作業療法の効果については角田らにより報告されており,その効果は退院4週間後も維持できているとされている.今回,rTMSと集中的作業療法により,麻痺手の機能向上がADLに汎化され,上肢機能が4週間後も維持されていた症例を経験したので報告する.【症例紹介】70歳代女性.右利き.X年右被殻出血により、左片麻痺を呈している.一人暮らしで,週に1回デイサービスに通っていた.今回,左上肢機能の回復を希望し,X+17年rTM...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 5
Main Authors 佐多, 裕次郎, 福田, 勇, 轟木, 耕司, 山中, 弘子, 山中, 英賢, 宮村, 紘平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
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Summary:【はじめに】近年,脳神経の再構築による片麻痺上肢機能向上を目的とした,新たなリハビリテーション手法として,低頻度反復性経頭蓋磁気刺激(以下,rTMS)が注目されている. rTMSと集中的作業療法の効果については角田らにより報告されており,その効果は退院4週間後も維持できているとされている.今回,rTMSと集中的作業療法により,麻痺手の機能向上がADLに汎化され,上肢機能が4週間後も維持されていた症例を経験したので報告する.【症例紹介】70歳代女性.右利き.X年右被殻出血により、左片麻痺を呈している.一人暮らしで,週に1回デイサービスに通っていた.今回,左上肢機能の回復を希望し,X+17年rTMSと集中的作業療法目的で当院入院.本人の希望は左手で茶碗を持って食事がしたいとのことであった.【方法】本治療は東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座を中心に実施しているNEURO-15と同様のプロトコールで実施した.入院期間は15日間とし,低頻度rTMS20分(健側大脳運動野手指領域に1Hzの刺激を1200発),個別作業療法60分,自主訓練60分を1セッションとし,入院日,退院日,日曜日を除く11日間,2セッションずつの合計22セッション実施した.また,治療前後と退院4週間後に評価を実施した.評価項目は上田式片麻痺機能検査,Fugl-Meyer Assessmentの上肢項目(以下FMA),Wolf Motor Function Test(以下WMFT),握力,Jikei Assessment Scale for Motor Impairment in Daily living(以下JASMID)を用いた.個別作業療法では促通反復療法,課題指向型訓練を中心に実施し,自主訓練は症例の能力に合ったものをセラピストが指導した上で実施した.【結果】治療前,治療後,退院4週間後で比較した.上田式片麻痺機能検査は上肢グレード7→11→11,手指グレード8→10→10.FMAは40/66点→63/66点→65/66点.WMFTは480.8秒→21.3秒→15.7秒.握力は6.3kg→13.3kg→14.4kg.JASMIDの使用頻度は26.6点→76.6点→80.0点.JASMID動作の質は24点→81.6点→78.3点となった.また左手で茶碗を持ち食事をすることも可能となった.【考察】慢性期脳卒中片麻痺患者の上肢FMA の臨床的に有意な最小変化量(Minimal Clinically Important Difference:MCID)は4.25~7.25 点と報告されている.本症例はrTMSと集中的作業療法により,FMAは40点→63点となり,MCIDを大きく上回る結果となり,rTMSと集中的作業療法は有効であったと考えられる.また本治療によりJASMIDに評価による上肢の使用頻度は改善し,4週間後も維持されていたことから,麻痺手の機能向上はADLに汎化されたと言える.本症例は入院時から麻痺手で出来ることが増える度に,「左手を使うことが楽しい」と話されており,日常生活の中でも,麻痺手を積極的に使うようになったと考える.さらに在宅でも本人のモチベーションは維持されており,左手を使用し続け,自主訓練も継続していたことが今回の結果につながったと考える.【倫理的配慮,説明と同意】本報告に際し,当院倫理・患者の権利検討委員会の承認と,患者本人から同意書による同意を得た.
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2016.0_5