カンボジアにおける集約型住民林業区の土地利用動態と要因分析からの教訓 台地・丘陵地帯のゴム園と小規模畑作地拡大域を事例として

• Published in: 森林研究 Vol. 81; pp. 1 - 11
• Main Authors: 倉島, 孝行, 松浦, 俊也, 日野, 貴文, 神崎, 護, ソベン, キム
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 国立大学法人 京都大学フィールド科学教育研究センター 2021
• Subjects: カンボジア; コミュニティ林業; 台地・丘陵地帯; 発展途上国; 集約型林業
• ISSN: 1344-4174; 2759-3134
• DOI: 10.60409/forestresearch.81.0_1

本稿ではカンボジアを例に，集約管理型コミュニティ林業（以下，CF）導入・普及の試みが発展途上国の台地・丘陵地帯で直面しうる問題と，その現実的な対策について解明・論述する．具体的には一地方内の複数のCF 区域と各周辺域の土地利用動態，それらの差違の要因，以上の点から汲み取れる施策上の示唆点を記す．カンボジアでは大規模森林伐採権制度停止後，国土の11％をCF 域とする方針が出された．だが，森林維持群と耕地拡大群という，好対照なCF区域が狭い範囲内に出現していた．特に後者には政府の新たな土地コンセッション発行に基づくゴム園の拡大と，農民による商品農作物栽培地の拡大とが直接・間接に影響していた．以上の対照的なCF 区域出現の背景として，村ごとで異なった余剰可耕地の大小と，新参者の耕地化の動きが重要だった．そこで今後，森林維持群を増やすためには，1）CF区域の取捨選択に当たり，CF 以外の土地利用政策と農林業の動向，それらに由来する土地需要の変化を踏まえた，中期的で広範な分析に基づく判断と，2）CF 区域での新参者の耕地化に，元からいる村人らが追随しないようにする効果的な支援が肝要だと言える．