パリの都市型集合住宅とその中庭の意味に関する研究 欧日の中庭型住宅の比較

本研究は,昨今日本でも建設されるようになってきた中庭型集合住宅の源流を求めて,フランスのパリの専門家と共同で実態とその意味を探ったものである。具体的には,第1に中庭型集合住宅の否定から再評価までの経緯を明らかにすること,第2に現代の集合住宅計画における中庭型集合住宅の実態を明らかにすること,第3に現代の中庭の意味を明らかにすること,第4に中庭の潜在的な意味を明らかにすること,最後に欧日(パリと日本)での中庭の意味の違いについて明らかにすることまでの5項目を挙けている。研究は,2段階の計画で,今回は前4つの目的を遂行し,最後の欧日での中庭の意味の違いの研究は,追って行うこととしている。第1の歴史...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in住宅総合研究財団研究年報 Vol. 22; pp. 157 - 166
Main Authors 服部, 岑生, エルブ, モニック, 高橋, 淳子, 青木, 光之, 鈴木, 雅之, マッゾーニ, クリスティーナ
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般財団法人 住総研 1996
Online AccessGet full text
ISSN0916-1864
2423-9879
DOI10.20803/jusokennen.22.0_157

Cover

More Information
Summary:本研究は,昨今日本でも建設されるようになってきた中庭型集合住宅の源流を求めて,フランスのパリの専門家と共同で実態とその意味を探ったものである。具体的には,第1に中庭型集合住宅の否定から再評価までの経緯を明らかにすること,第2に現代の集合住宅計画における中庭型集合住宅の実態を明らかにすること,第3に現代の中庭の意味を明らかにすること,第4に中庭の潜在的な意味を明らかにすること,最後に欧日(パリと日本)での中庭の意味の違いについて明らかにすることまでの5項目を挙けている。研究は,2段階の計画で,今回は前4つの目的を遂行し,最後の欧日での中庭の意味の違いの研究は,追って行うこととしている。第1の歴史的経緯は,衛生思想とそれを支持した人道主義者たちの運動により,旧来型の中庭型住宅が駆逐されたことが,明らかにされた。人道主義者の考え方には,中庭型そのものを否定するものはなかったが,次第に街区レベルの衛生思想が普及するにつれて中庭型か消滅した。しかし,1974年に開放型集合住宅がパリの景観や中庭のような中間ゾーンの価値を失わせたと非難され,歴史と現代をつなぐ中庭型が復活することになった。第2,第3の目的では,現代のパリの都市型集合住宅では,公共と個人の領域の中間にある中庭あるいは通路の価値がみとめられ,小中庭型と大規模庭園型の2タイプが存在していることが示された。小中庭では,街区の内部に中庭を閉じこめるのでなく,街区周辺から入れる公開性が,必ずしも居住者の賛成を得られないにも関わらず,試みられている。大規模なものでは,さらに,公園的な機能と通路的な機能が複雑に分化して存在している。 第4の目的では,中庭の存在によって,交通に使われたり,近隣交流に使われたりすることが,居住者相互間の交流に寄与するという点に,多くの建築家たちは,中庭型住宅の社会的な意義を見ている。このように,中庭には,居住者などの交流を促す社会性があるということである。
ISSN:0916-1864
2423-9879
DOI:10.20803/jusokennen.22.0_157