安定期COPD 患者のMIP には栄養状態が関係する O-082 呼吸・循環・代謝
【はじめに】 呼吸サルコペニアは、日常生活動作や生活の質に悪影響を及ぼすことが示されていることから、予防および改善が必要な病態である。我々は、先行研究を基に、呼吸サルコペニアにも栄養状態が関係しているとの仮説を立てた。本研究の目的は、呼吸サルコペニアの診断基準に含まれている吸気筋力(maximal inspiratory pressure:MIP)と簡易栄養状態評価表-短縮版(mini nutritional assessment short form:MNA-SF)の関係を検証することとした。本研究は、COPD患者の呼吸サルコペニアに対する理学療法の一助になると考える。【方法】 本研究は、多...
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Published in | 九州理学療法士学術大会誌 p. 82 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
2023
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Summary: | 【はじめに】 呼吸サルコペニアは、日常生活動作や生活の質に悪影響を及ぼすことが示されていることから、予防および改善が必要な病態である。我々は、先行研究を基に、呼吸サルコペニアにも栄養状態が関係しているとの仮説を立てた。本研究の目的は、呼吸サルコペニアの診断基準に含まれている吸気筋力(maximal inspiratory pressure:MIP)と簡易栄養状態評価表-短縮版(mini nutritional assessment short form:MNA-SF)の関係を検証することとした。本研究は、COPD患者の呼吸サルコペニアに対する理学療法の一助になると考える。【方法】 本研究は、多施設共同の横断研究である。対象は、病状安定期のCOPD患者とした。除外基準は、重篤な併存疾患を有する者、主要測定項目に欠損値がある者とした。栄養状態は、MNA-SFを評価した。呼吸機能は肺活量、努力性肺活量、1秒量、%1秒量、1秒率、MIP、呼気筋力、global initiative for chronic obstructive lung disease(GOLDの病期分類)を評価した。息切れの評価としてmodified medical research council dyspnea scale(mMRC)息切れスケール、身体機能評価として、握力、膝伸展筋力を評価した。統計解析は、各測定項目の関連をPearsonの相関分析で検討した。次に、従属変数をMIP、独立変数をMNA-SFとした回帰分析を行った。model2では、呼吸機能を、model3では人口動態変数を共変量とした重回帰分析を行った。【結果】 対象は、COPD患者90名(平均年齢75±9歳、男性84%)であった。対象者のMIPは45.6±21.2 ㎝H2O, MNA-SFは11±2点であった。MIPとr=0.4以上の有意な相関を認めたのは、体重、MEP、握力、膝伸展筋力であった。重回帰分析で共変量を投入してもMIPとMNA-SFの関係性は堅持された(標準化係数β=0.30, p=0.007)。【考察】 COPD患者は、肺過膨張に伴い、横隔膜が平低化する。この状態が慢性的に続くことで、横隔膜をはじめとする吸気筋の筋長が短縮し、長さ-張力関係が破綻する。これら一連の機序によってCOPD患者は吸気筋力が低下する。また、COPD患者は気道抵抗の増大や吸気筋の換気効率の低下からエネルギー消費量が増大していることが報告されている。これらのことから、慢性的な横隔膜の平低化に伴う吸気筋力の低下、吸気筋仕事量の増大は、エネルギー消費量の増大を招き、COPD患者の低栄養を招いている一因と推察する。本研究の結果から、呼吸サルコペニアの判定基準に含まれる吸気筋力と栄養状態との関係が明らかとなった。吸気筋力の評価を行い、低栄養にならないよう指導を行うことで、呼吸サルコペニアを予防する理学療法の一助となる可能性が示された。【結論】 COPD患者の吸気筋力には栄養状態が関係することが明らかになった。呼吸サルコペニアに陥らないよう、呼吸筋力の評価のみではなく、栄養状態へのアプローチも行う必要性が示唆された。【倫理的配慮】 対象者には、本研究の内容を説明し、同意を得たうえで研究への参加を求めた。研究への参加は自由意志であり、対象者にならなくても不利益にならないこと、同意した後でも同意を撤回できることを説明した。本研究は当院の倫理審査員会の承認を得て実施した(承認番号:KOGA2023002)。 |
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ISSN: | 2434-3889 |
DOI: | 10.32298/kyushupt.2023.0_82 |