人工膝関節全置換術患者における膝伸展筋力の経時的変化 器械による大腿四頭筋セッティング訓練効果

【目的】大腿四頭筋セッティング(以下セッティング)は、人工膝関節全置換術(以下TKA)などの術後早期の筋力訓練として広く用いられている。しかしセッティングの負荷量は経験的判断や、患者自身に任せることが多く、客観的な負荷量の調整が困難である。そこで今回器械を用いセッティングの負荷量を設定し、その訓練効果について検討したので報告する。 【対象・方法】平成20年4月から平成21年10月までに当院でTKAを施行した25名35膝(71.1±6.8歳)を対象とした。対象者全員に対して、我々が開発している下肢簡易筋力測定・訓練器(以下訓練器)を用い、術前及び術後1週から5週までの各週に筋力測定を行った。測定...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 111
Main Authors 丸山, 潤, 渡辺, 博史, 古賀, 良生, 佐藤, 卓, 縄田, 厚
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2010
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.29.0.111.0

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Summary:【目的】大腿四頭筋セッティング(以下セッティング)は、人工膝関節全置換術(以下TKA)などの術後早期の筋力訓練として広く用いられている。しかしセッティングの負荷量は経験的判断や、患者自身に任せることが多く、客観的な負荷量の調整が困難である。そこで今回器械を用いセッティングの負荷量を設定し、その訓練効果について検討したので報告する。 【対象・方法】平成20年4月から平成21年10月までに当院でTKAを施行した25名35膝(71.1±6.8歳)を対象とした。対象者全員に対して、我々が開発している下肢簡易筋力測定・訓練器(以下訓練器)を用い、術前及び術後1週から5週までの各週に筋力測定を行った。測定肢位は膝窩部に訓練器を置いた長座位で、骨盤と下腿遠位部を非伸縮性ベルトにて固定した。その状態で膝を伸展するように力を入れさせ、等尺性膝伸展最大筋力を測定した。そして術後1週から訓練器でセッティング訓練を行った訓練群(72.6±5.3歳、15名20膝)と訓練器は使用せず通常のリハビリテーションを行ったコントロール群(69.1±7.9歳、10名15膝)に分け比較した。訓練器は任意の負荷設定(収縮時間、回数、量)が可能で、目標の負荷量に達すると音楽が流れるという特徴がある。訓練器の負荷量は、最大努力でセッティングを行った時の数値を基準にその40%の値とし、週ごとに負荷量を変更した。収縮時間は10秒間、回数は20回でそれを2セット行わせた。統計学的検討には2群間の比較では対応のないt検定を、経時的変化については反復測定分散分析を用い、有意水準を5%未満とした。本研究は対象者に研究の趣旨を説明し、同意を得て行っている。 【結果】2群間において年齢、体重、術前の筋力は有意差を認めなかった。術後の筋力においても各週とも有意差は認めなかった。しかし術後筋力の経時的変化では2群とも有意な増加を認め,特に訓練群は有効な経過を示し,統計学的に差を認めた。 【考察・まとめ】高齢者の筋力増強訓練では筋骨格系の傷害や循環器系の影響を考慮する必要がある。加えて術後のリハビリテーションでは、過負荷による炎症の助長を避けながら筋力改善、動作獲得を図る必要がある。そのため術後早期の炎症期において筋力訓練するには、特に適正な負荷量の設定が重要と考える。今回の結果から、筋力の経時的変化において訓練群は有効な経過を示し、このような器械で客観的に筋力訓練することの意義が確認できた。しかし今回の負荷設定が適正であったかどうかについては検討が必要であり、今後、負荷設定などを変更して検討したいと考えている。
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ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.29.0.111.0