疾患を有する高齢者の身体機能は健常高齢者に近づくか 苑田会多施設間研究

【目的】 脳血管疾患発症後、脊椎疾患術後、人工膝関節術後の症例において、バランスや歩行能力など身体機能の回復について調査した研究は多く報告されているが、健常者と同等の身体機能を獲得出来るかは明らかとなっていない。本研究の目的は、脳血管疾患、脊椎疾患術後、人工膝関節術後の高齢者と健常高齢者の身体機能を比較し、発症後および術後回復の基準値となりえるか検討することである。 【方法】 対象は当法人施設に入院中もしくは外来通院中で自立歩行可能な症例168名とした。今回の研究にあたり、ヘルシンキ宣言に基づき、研究の趣旨を説明し、研究参加の同意を得た。疾患内訳は脳血管疾患群27名(CVA群、男性19名、女性...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 266
Main Authors 佐々木, 克典, 中村, 学, 朝重, 信吾, 廣幡, 健二, 末永, 達也, 勝又, 泰貴, 白谷, 智子, 古谷, 英孝, 田中, 友也, 美崎, 定也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.266.0

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Summary:【目的】 脳血管疾患発症後、脊椎疾患術後、人工膝関節術後の症例において、バランスや歩行能力など身体機能の回復について調査した研究は多く報告されているが、健常者と同等の身体機能を獲得出来るかは明らかとなっていない。本研究の目的は、脳血管疾患、脊椎疾患術後、人工膝関節術後の高齢者と健常高齢者の身体機能を比較し、発症後および術後回復の基準値となりえるか検討することである。 【方法】 対象は当法人施設に入院中もしくは外来通院中で自立歩行可能な症例168名とした。今回の研究にあたり、ヘルシンキ宣言に基づき、研究の趣旨を説明し、研究参加の同意を得た。疾患内訳は脳血管疾患群27名(CVA群、男性19名、女性8名、平均年齢67.5±5.0歳)、TKA術後者群103名(TKA群、男性18名、女性85名、72.1±4.8歳)、脊椎疾患に対する椎体間固定術後者群38名(脊椎群、男性15名、女性23名、69.2±6.0歳)であった。除外基準は重度の心疾患、腎疾患および糖尿病などの内科疾患を有する者、整形疾患で術後経過不良の者や痛みの強い者、認知症のある者とした。比較対象は健常高齢者21名(Con群、男性9名、女性12名、71.7±5.1歳)とした。測定課題は、片脚立位(One leg standing: OLS)、Functional Reach Test(FRT)、10m最大歩行速度(Maximum Walking Speed: MWS)、Timed up and go test(TUG)の4項目を行った。各測定項目とも測定回数は2回とし、平均値を算出した。統計解析は各測定項目に対して、群を要因とした一元配置分散分析と多重比較検定を行った。いずれの解析も危険率5%とした。 【結果】 OLSではCVA群に比べCon群が有意に長かった。FRTではCVA群および脊椎群に比べ、Con群が有意に長かった。MWSではCon群がCVA群、TKA群および脊椎群に比べ有意に速かった。TUGでは全ての群間で有意な差はみられなかった。 【考察】 今回の結果より、Con群は疾患群と比較し、OLS、FRT、MWSにおいて高い身体機能を有することが明らかとなった。一方で、TUGにおいてはCon群と疾患群に差は認められず、またTKA群はOLS、FRT、脊椎群はOLSに差が認められなかったことから、疾患を有する高齢者においても特異的に健常高齢者の身体機能近くまで回復すると考えられる。今後はCVA発症後および整形疾患術後から長期経過した症例に対してさらに検討していきたい。
Bibliography:P2-16-152
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.266.0