変性腰椎すべり症に対する理学療法の1例 腰椎の可動性を考慮したアプローチについて

【目的】変性腰椎すべり症に対する理学療法において、運動療法は効果的であるという報告がいくつかある。今回、急性腰痛を発症した変性腰椎すべり症の保存症例に対して理学療法(以下PT)を経験する機会を得た。PTは腰椎の可動性に着目し、腰椎後彎方向と骨盤後傾方向にアプローチを実施し改善を認めたので、文献的考察を加えて報告する。 【症例及び理学所見】症例は40台後半の女性である。現病歴は、犬を抱えた際に腰痛を発症した。主訴は、疼痛とシビレである。理学所見として、疼痛は座位では両下腿に痺れを伴う腰部痛の出現、動作時では腰部屈曲、伸展、左右側屈、左右回旋動作にて出現し、特に前屈にてcategorical sc...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 125
Main Authors 源, 裕介, 橋本, 貴幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2010
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Summary:【目的】変性腰椎すべり症に対する理学療法において、運動療法は効果的であるという報告がいくつかある。今回、急性腰痛を発症した変性腰椎すべり症の保存症例に対して理学療法(以下PT)を経験する機会を得た。PTは腰椎の可動性に着目し、腰椎後彎方向と骨盤後傾方向にアプローチを実施し改善を認めたので、文献的考察を加えて報告する。 【症例及び理学所見】症例は40台後半の女性である。現病歴は、犬を抱えた際に腰痛を発症した。主訴は、疼痛とシビレである。理学所見として、疼痛は座位では両下腿に痺れを伴う腰部痛の出現、動作時では腰部屈曲、伸展、左右側屈、左右回旋動作にて出現し、特に前屈にてcategorical scale(以下CS)で非常に強い腰痛と右下腿外側に強い痺れが確認された。理学所見はPLFテスト左右共に陽性(左<右)。overテスト左右共に陽性(右=左)。SLRでの放散痛は左右共に陰性。Thomasテストは左右共に陰性。筋のstiffnessは主にPLFテストでの多裂筋、overテストでの大腿筋膜張筋(以下TFL)に認められた。 【画像所見】L4/5ですべりが確認。L4のすべり量の測定はwhiteとpanjabiの方法に準じて行い、L4の椎体が画像上で39mmに対し、中間位で7.92mm、前屈位で9.33mm、後屈位で7.52mm、動揺率は4.6%であった。 【理学療法】PTは急性腰痛を考慮し、受傷後2週後に開始した。腰部多裂筋のストレッチ、TFLのストレッチを中心に行い、L4/5間以外の椎間関節の後彎の動きと、骨盤後傾方向の動きを促した。 【結果】PT開始2回で座位での右下腿外側の痺れは軽減、動作時の痺れも軽減した。腰痛は前屈時にてCSで軽度レベルまで軽減した。理学所見ではPLFテストが左右共に陰性、overテストでも完全に陰性化に近づく結果が得られた。 【考察】今回は急性腰痛であったが、すべり症の要素をもともと持っていたためすべり症による疼痛と痺れが発生し、その治療による効果が得られたと考える。 Woosleyとnortonの報告では、腰椎はL1/2で約12°屈伸可動域があり、1分節下降するごとに1°増加し、L4/5にて約15°、L5/S1においては最も大きく約20°となると報告している。L4/5の滑りについては、L5/S1にて可動性が減少したためL4/5間でのhyper mobilityが生じ、滑りが生じたと考える。また骨盤前傾を作り、L4/5間の剪断力を生むTFLのtightnessや、上位腰椎の可動性低下もL4/5のhyper mobilityを助長したと考える。そのため、L4/5以外の腰部多裂筋ストレッチ、TFLのストレッチは効果的であったと考える。 【まとめ】本症例は、変性腰椎すべり症の基盤と加齢に伴う腰椎可動性低下が、L4/5 hyper mobilityを起こしたと考えられた。そのため、腰椎全体の可動性を作り、過剰な可動性が生じてしまった関節の負荷を減らし維持していくことが今後も必要であると考えられた。
Bibliography:109
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.29.0.125.0