呼吸リハビリテーションを3年間継続した慢性閉塞性肺疾患患者の長期効果 ―前期高齢者と後期高齢者の比較 O-087 呼吸・循環・代謝

【はじめに】 慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)患者のリハビリテーション効果については長年検討されており、リハビリテーション開始から短期間での効果はエビデンスが確立されているが、長期になると効果が減少するという報告が散見される。そこで本研究は、3年間の呼吸リハビリテーション効果を検証する目的でCOPD患者を前期高齢者と後期高齢者に分け、縦断的にパラメータの変化を検討した。【方法】 対象は呼吸リハビリテーションを3年間継続した安定期外来COPD患者62名(平均年齢75.6±6.0歳、男性59名、平均%FEV1.0 61.7±22.2%)で、呼吸リハビリテーション開始時に65歳~74歳であった患者...

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Published in九州理学療法士学術大会誌 p. 87
Main Authors 猿渡, 聡, 古河, 琢也, 堀江, 淳, 渡邊, 尚, 林, 真一郎, 阿波, 邦彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2023
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Summary:【はじめに】 慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)患者のリハビリテーション効果については長年検討されており、リハビリテーション開始から短期間での効果はエビデンスが確立されているが、長期になると効果が減少するという報告が散見される。そこで本研究は、3年間の呼吸リハビリテーション効果を検証する目的でCOPD患者を前期高齢者と後期高齢者に分け、縦断的にパラメータの変化を検討した。【方法】 対象は呼吸リハビリテーションを3年間継続した安定期外来COPD患者62名(平均年齢75.6±6.0歳、男性59名、平均%FEV1.0 61.7±22.2%)で、呼吸リハビリテーション開始時に65歳~74歳であった患者を前期高齢者群、75歳以上であった患者を後期高齢者群とした。測定時期は初期、1年、2年、3年とした。検討項目は呼吸機能(%FVC、%FEV1.0、FEV1.0%)、modified Medical Research Council(以下、mMRC)息切れスケール、身体機能検査として最大呼気口腔内圧(以下、MEP)、最大吸気口腔内圧(以下、MIP)、握力、膝伸展筋力、6分間歩行距離テスト(以下、6MWD)を測定し、ADL評価は長崎大学呼吸疾患ADL質問票(以下、NRADL)、QOL評価はCOPD Assessment Test(以下、CAT)、精神状態の評価はHospital Anxiety and Depression Scale(以下、HADS)不安/うつ、活動範囲の評価はLife-Space Assessment(以下、LSA)を測定した。統計解析方法は、2群間の初期から3年時までの比較を分割プロットデザインによる分散分析で測定時期の主効果と交互作用を分析し、事後検定はボンフェローニ検定を用いて分析した。なお、帰無仮説の棄却域は有意水準5%未満とし、解析にはSPSSver26.0を用いた。【結果】 前期高齢者群は29名、後期高齢者群は33名であった。測定時期の主効果が認められた項目は、%FVC(p<0.05)、FEV1.0%(p<0.05)、mMRC(p<0.001)、MEP(p<0.01)、膝伸展筋力(p<0.01)、6MWD(p<0.001)、HADSうつ(p<0.01)、LSA(p<0.05)であった。%FVCは初期から3年後にかけて有意に低下、FEV1.0%は初期から3年後にかけて有意に改善、HADSうつは1年後から3年後にかけて有意に悪化、MEPと6MWDは初期から1年後にかけて有意に改善し1年後から3年後にかけて有意に低下、LSAは初期から1年後にかけて有意に改善し2年後から3年後にかけて有意に低下、mMRCと膝伸展筋力は初期から1年後にかけて有意に改善しその後維持していた。交互作用が認められた項目は握力(p<0.05)であり、前期高齢者群は改善傾向、後期高齢者群は低下傾向を認めた。【結論】 COPD患者に対する長期呼吸リハビリテーションは前期高齢者や後期高齢者に関わらず効果的であり、膝伸展筋力やmMRC息切れスケールの改善を長期的に維持させる可能性が示唆された。呼気筋力や全身持久力、活動範囲は初期から1年後の改善は認めるが、その後効果が維持できず低下傾向となる可能性が示唆された。また、FVCや精神状態は長期的に経過するほど悪化する傾向が認められた。一方、握力のみ後期高齢者群で低下傾向を示すことが明らかとなった。後期高齢者の握力低下が著しいことは報告されており、本研究も同様に低下する傾向がみてとれた。よって、握力低下が生じやすことを考慮したプログラム立案が必要である。【倫理的配慮・説明と同意】 倫理的配慮はヘルシンキ宣言に基づき、対象患者に不利益とならないよう使用データを匿名化保管し、個人情報保護に努めるとともに、情報の漏洩防止を徹底した。また、本研究への参加は自由意思であり不参加でも不利益にならないことや、一度同意した場合であっても同意を撤回できることを説明し、評価結果の使用について同意を得た。
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2023.0_87