整形外科的良肢位を考慮した呼吸理学療法経験 左大腿骨転子部骨折受傷後に右完全無気肺を合併した症例への取り組み

【はじめに】 呼吸器疾患を合併する症例においては、整形外科的良肢位による姿勢管理が一定期間継続されると、気道分泌物が貯留しやすく、特に自己排痰が困難な症例や高齢者では容易に無気肺を発生させる。今回、左大腿骨転子部骨折受傷後、肺炎による右完全無気肺を呈した症例に対し、治療用枕を使用し、骨折部への負担を考慮した呼吸理学療法を経験したので報告する。 【経過】 85歳女性、2010年8月13日左大腿骨転子部骨折を受傷。同日より介達牽引開始、8月18日より熱発認め、8月21日肺炎と診断され右肺完全無気肺を呈する。8月22より酸素療法開始。8月30日より吸入療法開始、8月31日より排痰、換気改善を目的に呼...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 206
Main Authors 馬場, 志, 湖東, 英里香, 渡邉, 賢治, 守屋, 智史, 大嶋, 直志, 柳, 英利
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.206.0

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Summary:【はじめに】 呼吸器疾患を合併する症例においては、整形外科的良肢位による姿勢管理が一定期間継続されると、気道分泌物が貯留しやすく、特に自己排痰が困難な症例や高齢者では容易に無気肺を発生させる。今回、左大腿骨転子部骨折受傷後、肺炎による右完全無気肺を呈した症例に対し、治療用枕を使用し、骨折部への負担を考慮した呼吸理学療法を経験したので報告する。 【経過】 85歳女性、2010年8月13日左大腿骨転子部骨折を受傷。同日より介達牽引開始、8月18日より熱発認め、8月21日肺炎と診断され右肺完全無気肺を呈する。8月22より酸素療法開始。8月30日より吸入療法開始、8月31日より排痰、換気改善を目的に呼吸理学療法開始。9月8日観血的整復固定術施行。術当日より呼吸理学療法を再開、9月10日より歩行訓練開始。呼吸理学療法は、術前日までの6日間、術後当日より3日間、計9日間、1日2回の頻度で排痰、右下葉の換気改善目的での左前傾側臥位にて徒手的呼吸介助を実施した。術前では骨折部が下側になることで、疼痛および骨折部の転移等が生じる可能性があったため、治療用枕を用いてベッドと骨折部位との間に約3cmの空間を作り、直接骨折部位がベッドに接触しないよう工夫した。なお、今回の発表に際し、対象者に研究の趣旨と内容を説明し同意を得た。 【結果】 リハ介入1日目(術前):酸素2L、PaO2:68.9mmHg、PaCO2:52.3mmHg、SpO2:93%、CRP:7.2mg/dl、WBC:10400/1µl、聴診にて右上葉断続性ラ音、右下葉は肺胞音消失、胸壁上にわずかにラトリングが確認できた。左前傾側臥位にて呼吸理学療法開始後すぐにSpO2が92%→95%と3%上昇、多量の黄色粘調痰が吸引される。リハ介入9日目 (術後2病日) :酸素1L、CRP:7.3mg/dl、WBC:8350/1µlにて右上葉断続性ラ音、右下葉は気管支呼吸音からわずかに断続性ラ音が聴取できる部位認める。痰量多いものの、粘性は減少傾向。歩行は平行棒内歩行1往復にてSpO2が95%→91%と低下するが、呼吸苦の訴え認めず。リハ介入35日目(術後28病日): 酸素、PaO2:71.4 mmHg、PaCO2:50.7 mmHg、SpO2:95.7%、CRP:2.9mg/dl、WBC:8240/1µl。聴診にて右上葉断続性ラ音は認めるが右下葉肺胞呼吸音聴取できるようになる。ADLはほぼ自立レベルとなり、移動もシルバーカー歩行見守りレベルとなる。 【考察】 今回、治療用枕という比較的簡便な道具のみで骨折部への侵襲を最小限に抑えることができ、分泌物貯留や無気肺のさらなる悪化を予防できたと考えられる。 【まとめ】 今後、高齢化に伴い、呼吸器合併症を有する症例も多くなると予想されるため、基礎疾患に対する病状の把握を行いつつ、呼吸器合併症の悪化の予防に努めていき早期離床を目指していく必要があると思われる。
Bibliography:P2-10-092
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.206.0