症例 胸部大動脈瘤の肺動脈への破裂 破裂部が大動脈瘤内血栓により閉塞された1剖検例

胸部大動脈瘤が肺動脈へ破裂し,かつ大動脈瘤内血栓により破裂部が閉塞され,剖検時に大動脈瘤と肺動脈との間に交通を認めなかったまれな1例を報告する. 症例は73歳,男.胸部X線像にて異常を指摘され,DSAにて胸部大動脈瘤と診断された.1年後労作時呼吸困難および失神発作を反復し入院した.胸部X線像では1年前に比し大動脈瘤の増大を認めた.入院時よりDIC所見を呈し,ヘパリン,AT III療法を開始したが頸静脈怒張,浮腫,肝腫脹,中心静脈圧上昇などの右心不全徴候が進展し,断層心エコーで右房,右室の拡張を,肺血流スキャンで左肺全体の欠損像を認めた.右心カテーテル検査では著明な肺高血圧(90/45mmHg)...

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Published in心臓 Vol. 20; no. 8; pp. 1007 - 1013
Main Authors 大川, 真一郎, 藤森, 尚子, 大坪, 浩一郎, 桑島, 巌, 上田, 慶二, 坂井, 誠, 松下, 哲, 蔵本, 築
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.08.1988
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.20.8_1007

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Summary:胸部大動脈瘤が肺動脈へ破裂し,かつ大動脈瘤内血栓により破裂部が閉塞され,剖検時に大動脈瘤と肺動脈との間に交通を認めなかったまれな1例を報告する. 症例は73歳,男.胸部X線像にて異常を指摘され,DSAにて胸部大動脈瘤と診断された.1年後労作時呼吸困難および失神発作を反復し入院した.胸部X線像では1年前に比し大動脈瘤の増大を認めた.入院時よりDIC所見を呈し,ヘパリン,AT III療法を開始したが頸静脈怒張,浮腫,肝腫脹,中心静脈圧上昇などの右心不全徴候が進展し,断層心エコーで右房,右室の拡張を,肺血流スキャンで左肺全体の欠損像を認めた.右心カテーテル検査では著明な肺高血圧(90/45mmHg)と低心拍出状態(CI 1.03l/分/M2)を示した.肺動脈造影は左肺動脈像の欠如と右肺動脈像の造影の減弱を示した.以上より大動脈瘤による肺動脈圧迫および血栓形成による左肺動脈閉塞と右肺動脈狭窄と診断し,肺動脈主幹部よりウロキナーゼ4万単位を注入したが肺動脈圧の低下を認めず入院30日後に死亡した.剖検にて大動脈瘤は大動脈弓部下面から縦隔左端に嚢状に広がり,左肺動脈起始部を圧迫閉塞し,さらに肺動脈主幹部へ破裂していた.大動脈瘤内は血栓でみたされ,破裂部には層状の陳旧性血栓がそのまま陥頓し,大動脈と肺動脈との交通は認めなかった.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.20.8_1007