当院でのロボットスーツHALの使用経験 急性期片麻痺患者1例を通じて

【はじめに】  現在,ロボットスーツHAL福祉用(Hybrid Assistive Limb:以下HAL)の適応疾患や使用効果,プロトコル等については明確なガイドラインは示されておらず,近年,導入施設の増加に伴いリハビリテーション分野での運用が探られている.今回,脳内出血発症急性期よりHALを使用し理学療法を行なった1例を通じて当院の状況及び課題について報告する. 【症例紹介】  67歳男性.診断名:左視床脳内出血及び脳室穿破.初期評価(2病日).意識レベル:E4V5M6(GCS).身体機能:右片麻痺(下肢Brs.III),重度感覚障害.IQ:64.歩行:右短下肢装具を使用し平行棒内3動作中等...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 89
Main Authors 黒澤, 保壽, 鳥谷, 将由, 鎌倉, みず穂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.89.0

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Summary:【はじめに】  現在,ロボットスーツHAL福祉用(Hybrid Assistive Limb:以下HAL)の適応疾患や使用効果,プロトコル等については明確なガイドラインは示されておらず,近年,導入施設の増加に伴いリハビリテーション分野での運用が探られている.今回,脳内出血発症急性期よりHALを使用し理学療法を行なった1例を通じて当院の状況及び課題について報告する. 【症例紹介】  67歳男性.診断名:左視床脳内出血及び脳室穿破.初期評価(2病日).意識レベル:E4V5M6(GCS).身体機能:右片麻痺(下肢Brs.III),重度感覚障害.IQ:64.歩行:右短下肢装具を使用し平行棒内3動作中等度介助,麻痺側振り出し全介助.第4病日から15病日まで計5回,HALを併用した歩行訓練を実施.最終評価(15病日).身体機能:右片麻痺(下肢Brs.IV),中等度感覚障害.歩行:T字杖と短下肢装具を使用し2動作,麻痺側振り出しにのみ軽介助と改善を認めた.しかし,同日のHAL使用下での歩行は股関節内転・足部内反が強く出現,制御不可能となり継続中止に至った. 【考察】  運動学習において才藤らは,受動的な介助歩行passive guidanceよりも能動的に行なえるactive guidanceが有効としている.HALは麻痺側をセラピストが介助することが少なく,患者自身が,自らの意思(筋電)を発生・増幅させ,能動的に行なえるactive guidanceの要素を多く含んでいると考えられる.本症例のように中等度片麻痺・感覚障害を呈した場合,麻痺側の筋発揮及び運動方向が障害され,過介助となる場合があるが,微細な生体電位を増幅するHALのアシスト機能で,正しい筋発揮及び運動方向のフィードバックが可能となり,高い運動学習効果が期待される.本症例においても介入前後の変化で麻痺側下肢の振り出しの安定・歩容の改善が認められ,「着けると足が出しやすい」との効果を実感する発言も認められた. 当院では急性期脳血管疾患患者を対象としてHALの介入を行なった結果,効果が認められた症例の多くは回復過程の一時期(MMT1・2レベルの下肢屈伸,立ち上がりの介助量軽減,歩行時の振り出し)に使用した例であり,介助量の軽減・運動学習・モチベーション向上などが得られた.しかし,これらの効果は回復過程によるものなのか,HAL介入によるものなのかは現状では明確でない.また,半数以上はフィッティング・電極位置・参加意欲の問題で継続が困難であった.今後,効果的なプロトコル作成,評価基準設定など,リハビリテーション分野におけるHALの可能性を検討していきたい.
Bibliography:O2-14-089
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.89.0