運動・スポーツ実施動機と社会経済的地位の関連の検証 ー社会調査データの二次分析を通じた一考察ー

本研究は、運動・スポーツ実施の社会経済的格差の把握に向けて、運動・スポーツの実施動機と社会経済的地位の関連を検証した。これまで、世帯年収や学歴と成人の運動・スポーツ実施の関連が繰り返し報告されてきた。適度な運動の実施は健康に資するため、社会経済的地位による運動・スポーツ実施の格差は、健康の格差に繋がる。しかし、先行研究では社会経済的地位に応じた運動・スポーツ実施動機に関する議論が不十分であった。  本研究は、量的調査データの二次分析を通じて上記の課題に着手した。分析では回答者を、「1日30分以上の汗をかく運動を週に2日以上」実施している運動習慣者、習慣者の定義には該当しないが運動を実施している...

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Published inスポーツ社会学研究 Vol. 32; no. 2; pp. 69 - 83
Main Author 下窪, 拓也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本スポーツ社会学会 2024
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Summary:本研究は、運動・スポーツ実施の社会経済的格差の把握に向けて、運動・スポーツの実施動機と社会経済的地位の関連を検証した。これまで、世帯年収や学歴と成人の運動・スポーツ実施の関連が繰り返し報告されてきた。適度な運動の実施は健康に資するため、社会経済的地位による運動・スポーツ実施の格差は、健康の格差に繋がる。しかし、先行研究では社会経済的地位に応じた運動・スポーツ実施動機に関する議論が不十分であった。  本研究は、量的調査データの二次分析を通じて上記の課題に着手した。分析では回答者を、「1日30分以上の汗をかく運動を週に2日以上」実施している運動習慣者、習慣者の定義には該当しないが運動を実施している運動実施者、そして過去1年間に運動・スポーツを実施していない非実施者の3グループに分け、社会経済的地位との関連を検証した。その後、運動習慣者と実施者を対象に実施動機の潜在構造を分析し、実施動機と社会経済的地位の関連を検証した。一連の分析から以下の結果が得られた。まず、運動実施者と習慣者は非実施者よりも世帯年収および学歴が高い傾向があり、さらに運動習慣者は実施者よりも世帯年収が高い傾向がある。ただし分析モデルの説明力は高くない。次に、社会経済的地位と実施動機の関連から、運動実施者の中で、運動・スポーツを楽しむことや親しい他者との交流を動機とする人は中学・高校卒者に多く、多様な目的を志向する人は世帯年収が400万円以上ある傾向がある。一方で、運動習慣者内では実施動機と社会経済的地位は統計的に有意な関連が確認されなかった。最後に、未来志向によって社会経済的地位と運動・スポーツ実施動機の関連を解釈できる可能性を議論した。
ISSN:0919-2751
2185-8691
DOI:10.5987/jjsss.32-02-02