研究 甲状腺心による重症心不全 肺高血圧,三尖弁閉鎖不全と僧帽弁逸脱を主徴とする病態
基礎心疾患がない, 甲状腺機能充進症に伴う重症心不全の病態を臨床的に検討した.対象は, 未治療ないし治療不十分な甲状腺機能充進症で, 心不全例11例, 対照例29例である.背景因子, 超音波検査, 心臓カテーテル検査, 予後を検討した. 心不全例の背景因子として, 高齢, 甲状腺中毒症の長い罹病期間, 心房細動を認めた.心不全例の全例に, 右心系の拡大と中等度以上の三尖弁閉鎖不全を超音波検査で認めた.治療前にカテーテル検査を行った6例全例で肺高血圧, 肺動脈模入圧上昇を認め, これらの所見は治療により可逆的であった.8例で僧帽弁逸脱を認め, そのうちの1例は甲状腺中毒症状出現と共に新たに出現し...
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Published in | 心臓 Vol. 23; no. 2; pp. 125 - 132 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
25.02.1991
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Subjects | |
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo1969.23.2_125 |
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Summary: | 基礎心疾患がない, 甲状腺機能充進症に伴う重症心不全の病態を臨床的に検討した.対象は, 未治療ないし治療不十分な甲状腺機能充進症で, 心不全例11例, 対照例29例である.背景因子, 超音波検査, 心臓カテーテル検査, 予後を検討した. 心不全例の背景因子として, 高齢, 甲状腺中毒症の長い罹病期間, 心房細動を認めた.心不全例の全例に, 右心系の拡大と中等度以上の三尖弁閉鎖不全を超音波検査で認めた.治療前にカテーテル検査を行った6例全例で肺高血圧, 肺動脈模入圧上昇を認め, これらの所見は治療により可逆的であった.8例で僧帽弁逸脱を認め, そのうちの1例は甲状腺中毒症状出現と共に新たに出現したと考えられた.また3例は治療により消失した.7例で, 中等度以上の僧帽弁逆流をパルス・ドップラー法で認めた.心不全治療の要点は, 頻脈の是正, 水分管理, 過剰な甲状腺ホルモンの是正であった.1例の突然死を除き, 治療への反応はよく, 平均24.9カ月の経過観察で予後は良好であった. 以上の検討から, 基礎心疾患のない甲状腺機能充進症に合併する重症心不全は, 左房圧上昇に由来したと考えられる肺高血圧, 三尖弁閉鎖不全を特徴とし, 頻脈性心房細動と僧帽弁逸脱を重要な増悪要因とすると考えられた. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo1969.23.2_125 |