非外傷性大腸穿孔15例の検討 特に術前白血球数減少を来した8例について

大腸穿孔は上部消化管穿孔に比べ, 診断, 治療が遅れ, 重篤な合併症を惹起しやすい.特に白血球減少を来した症例は予後不良である.非外傷性大腸穿孔15症例を術前白血球数が4000/μl未満と4000/μl以上の2群に分け, 両群を比較し, 特に重症な4000/μl未満の白血球減少症例8例について検討した。穿孔原因として4000/μl未満の群では大腸癌, 特発性が多く, 4000/μl以上では憩室炎が多かった.4000/μl未満の群は4000/μl以上に比べ, 手術前後を通して血圧, 白血球数が有意に低く敗血症性ショックを呈する例が多く, 術後は有意にDICとなる例が多かった.また, 治療において...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 60; no. 6; pp. 692 - 698
Main Authors 山口, 真彦, 吉澤, 康男, 木川, 岳, 町田, 宏, 根本, 洋, 中野, 浩, 上道, 治, 真田, 裕, 熊田, 馨, 佐々木, 純, 葛目, 正央, 成原, 健太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.12.2000
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Summary:大腸穿孔は上部消化管穿孔に比べ, 診断, 治療が遅れ, 重篤な合併症を惹起しやすい.特に白血球減少を来した症例は予後不良である.非外傷性大腸穿孔15症例を術前白血球数が4000/μl未満と4000/μl以上の2群に分け, 両群を比較し, 特に重症な4000/μl未満の白血球減少症例8例について検討した。穿孔原因として4000/μl未満の群では大腸癌, 特発性が多く, 4000/μl以上では憩室炎が多かった.4000/μl未満の群は4000/μl以上に比べ, 手術前後を通して血圧, 白血球数が有意に低く敗血症性ショックを呈する例が多く, 術後は有意にDICとなる例が多かった.また, 治療においても有意に濃厚な治療を必要とした.4000/μl未満の8例は平均70歳の高齢者にみられ, 穿孔の多くはS状結腸だったが, 胃癌浸潤例では横行結腸に穿孔がみられた.症例によりショック, DICを認め, 全例に人工肛門を造設した.術後は集中治療を行い, 長期入院を要し, 79歳, 女性で肝硬変を合併した特発性大腸穿孔の1例は術後2日目に死亡した.大腸穿孔は消化管穿孔と診断することが難しく的確な処置が遅れ, 停滞した大腸内容が流出するため重症化し易い.そのため腹部CTなどで微細な腹腔内遊離ガス像を見逃さず, 速やかに開腹手術を行い, 循環動態, 呼吸の安定, 敗血症, DICの治療など早目の対処が肝要である.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.60.692