下腿の形態における左右差の意義(第2報) 果部捻転と内・外果の高位差の関係

【目的】身体各部位において骨形態は身体運動に密接に関与している。骨のリモデリングが外力の影響を受けることはよく知られており、骨形態の左右差は運動による外力の左右差の結果であると推察される。そのため、骨形態が持つ左右差の意味を明らかにすることは、形態から機能を予測することや、形態と運動の矛盾によって生じる関節へのストレスを予測することに繋がり、運動療法に反映出来ると考えている。  今回、臨床上遭遇することが多い下腿の形態における左右差に着目し、果部捻転と内・外果の高位差(以下、果部高位差)を比較することで興味深い知見を得たので報告する。 【方法】対象は本検証の趣旨に同意を得た22名(男性12名、...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 80
Main Authors 江戸, 優裕, 岡﨑, 友明, 佐々木, 和敏, 清水, 暁彦, 保坂, 亮, 小原, もなみ, 福島, 進吾, 長岡, 麻由子, 角本, 貴彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2007
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Summary:【目的】身体各部位において骨形態は身体運動に密接に関与している。骨のリモデリングが外力の影響を受けることはよく知られており、骨形態の左右差は運動による外力の左右差の結果であると推察される。そのため、骨形態が持つ左右差の意味を明らかにすることは、形態から機能を予測することや、形態と運動の矛盾によって生じる関節へのストレスを予測することに繋がり、運動療法に反映出来ると考えている。  今回、臨床上遭遇することが多い下腿の形態における左右差に着目し、果部捻転と内・外果の高位差(以下、果部高位差)を比較することで興味深い知見を得たので報告する。 【方法】対象は本検証の趣旨に同意を得た22名(男性12名、女性10名、平均年齢26±4.6歳)とした。  計測肢位は脛骨粗面を正面に向けた背臥位とし、内果と外果を結ぶ線(以下、果間線)と床面に平行な線の成す水平面上での角度を果部捻転角度とした。また、果間線と、その中点から脛骨粗面に引いた線への垂線との成す前額面上での角度を果部高位差角度と定義した。そして、果部捻転角度と果部高位差角度を角度計で計測した。  得たデータに対して、果部外捻優位側(以下、外捻側)と果部高位差優位側(以下、高位差側)の関連性の有無を検証した。 【結果】外捻側と高位差側に有意な関連性を認めた(p<0.05)。 【考察】外捻側の果部高位差は、反対側よりも大きいことが示された。  果部捻転は水平面上、果部高位差は前額面上での形態変化であり、それぞれの面で下腿に対して何らかの力学的応力が作用した結果と考えられる。  下腿の近隣関節である距骨下関節は、荷重位における足部の回内・外によって、回旋自由度の小さい距腿関節を介して、下腿を遠位端から強制的に内・外旋させる働きを有している。また、距腿関節の関節面の形状や、腓骨と踵骨間の靭帯、脛・腓骨の骨間膜等によって、足部の回内には腓骨の挙上を、足部の回外には腓骨の下制を伴う。これらのことから、足部の回内・外によって果部外捻と果部高位差はペアリングになって増強、及び減弱するのではないかと考える。  筆者は第42回日本理学療法学術大会において、脛骨の外捻が優位な側は歩行開始時に第1歩目となりやすいことを報告した。今回の結果を踏まえると、歩行時の足部の運動と下腿形態との間に何らかの関連性があることが推測されるため、更に研究していくことが必要である。 【まとめ】左右の比較において、果部外捻が大きい側は果部高位差も大きくなることが示唆された。その理由として足部の運動の影響が考えられ、今後は下腿の形態に対する足部の影響について更なる研究が必要と考えている。
Bibliography:80
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.26.0.80.0