当施設認知症棟における転倒予防マネジメント構築のための検討 暴力行為報告者の転倒の特徴について

【はじめに】当施設認知症棟入所者の転倒関連行動に着目した先行研究において,認知症の行動・心理症状の1つである暴力行為と転倒の関連を指摘した(第9回日本老年行動科学会長野大会).しかし,暴力行為と転倒との因果関係を導き出すまでには至らず,新たな研究課題となっている.  本研究の目的は,暴力行為報告者の転倒の特徴を同定することで,当施設認知症棟における転倒予防マネジメント構築のための知見を得ることである. 【対象】2005年度に当施設認知症棟に入所した117名のうち,転倒報告のあった41名(男性15名,女性26名,平均年齢83.7±7.8歳,平均入所期間264.6±103.3日,入所中の転倒数3....

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 29
Main Authors 村山, 明彦, 上内, 哲男, 小松, 泰喜, 三谷, 健, 富樫, 早美, 緑川, 亨, 佐藤, 悦子, 米波, 浩二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2007
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Summary:【はじめに】当施設認知症棟入所者の転倒関連行動に着目した先行研究において,認知症の行動・心理症状の1つである暴力行為と転倒の関連を指摘した(第9回日本老年行動科学会長野大会).しかし,暴力行為と転倒との因果関係を導き出すまでには至らず,新たな研究課題となっている.  本研究の目的は,暴力行為報告者の転倒の特徴を同定することで,当施設認知症棟における転倒予防マネジメント構築のための知見を得ることである. 【対象】2005年度に当施設認知症棟に入所した117名のうち,転倒報告のあった41名(男性15名,女性26名,平均年齢83.7±7.8歳,平均入所期間264.6±103.3日,入所中の転倒数3.7±3.7回)を対象とした. 【方法】対象を暴力行為報告の有無で2群(以下,暴力群,非暴力群)に分け,性別,年齢,入所期間,Barthel Index (以下,BI),転倒数についてMann-Whitney のU検定を用いて群間での比較を行った.統計学的解析には,SPSS12.0J for Windowsを用い,有意水準5%未満を有意とした.なお,全ての調査は既存のリハビリテーション記録,看護・介護記録を用いたため対象に有害事象は生じなかった. 【結果】暴力群は13名(男性7名,女性6名,平均年齢85.5±7.3歳,平均入所期間241.7±111.2日,平均BI 35.7±18.2点,平均転倒数6.4±4.4回),非暴力群は28名(それぞれ8名,20名,82.8±7.7歳,275.2±97.7日,57.8±22.6点,2.4±2.3回)であった.統計学的解析の結果,暴力群は非暴力群よりもBIが有意に低く,転倒数においては高値を示した(それぞれp<0.01). 【考察】暴力群は非暴力群よりも日常生活において介助を必要とする者が多い事が示唆された.この事を踏まえて,暴力行為報告者が多く転倒していた原因を,暴力行為そのものが転倒に結びつくのではなく,暴力行為への対応が難しい事が介助希薄へと繋がり,単独行動の頻度を増加させ転倒に帰結するのではないかと推測した.これは,当施設の介護職員に対して実施した入所者の行動に関する意識調査において,暴力行為への対応が困難であると答えた職員が最も多かった事とも一致する(第17回全国介護老人保健施設熊本大会).  以上の事から,これまで不明瞭であった暴力行為報告者に対する転倒予防介入の作用点(大高ら,2003)が明らかになったと思われる.つまり,介護職員への教育的介入(暴力行為報告者への対応方法など)が奏功する可能性が示唆された.今後はこの点に関して更なる知見を得ていきたい.
Bibliography:29
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.26.0.29.0