MISによる両側同時TKAの階段昇降達成日数に関わる因子の検討 T杖歩行開始日と膝屈曲ROMに着目して

【目的】当院では最小侵襲手術(以下MIS)による両側同時人工膝関節全置換術(以下両側同時TKA)が行われており、早期ADL自立を目指し、術後翌日よりリハビリテーション(以下リハ)を行っている。ADL自立には階段昇降はかかせない項目の1つであり、昇降には十分な膝関節屈曲可動角度(以下膝屈曲ROM)が必要である。また日常臨床では、T杖歩行開始が遅い症例は階段昇降達成が遅いという状況がしばしば見受けられる。今回の目的は、MISによる両側同時TKAを施行した症例に対し、階段昇降を達成した期間で2群に分け、それぞれのT杖歩行開始日および膝屈曲ROMについての比較を行うこととする。 【方法】対象は当院で平...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 12
Main Authors 正木, 創平, 美崎, 定也, 杉本, 和隆, 古谷, 英孝, 朝重, 信吾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2007
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.26.0.12.0

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Summary:【目的】当院では最小侵襲手術(以下MIS)による両側同時人工膝関節全置換術(以下両側同時TKA)が行われており、早期ADL自立を目指し、術後翌日よりリハビリテーション(以下リハ)を行っている。ADL自立には階段昇降はかかせない項目の1つであり、昇降には十分な膝関節屈曲可動角度(以下膝屈曲ROM)が必要である。また日常臨床では、T杖歩行開始が遅い症例は階段昇降達成が遅いという状況がしばしば見受けられる。今回の目的は、MISによる両側同時TKAを施行した症例に対し、階段昇降を達成した期間で2群に分け、それぞれのT杖歩行開始日および膝屈曲ROMについての比較を行うこととする。 【方法】対象は当院で平成18年4月から10月にMISによる両側同時TKAを施行した症例16名、平均年齢72.9±5.3歳、全員女性であった。患者にはあらかじめ実験の主旨を説明し、同意を得た。方法は階段昇降を当院での退院目標基準日(14日)以内に達成とした群(A群10名)と、それ以降に達成した群(B群6名)の2群にわけ、それぞれの群においてT杖開始日および術後7日目の膝屈曲ROMを後方視的に調査し比較した。当院の術後スケジュールは術後翌日より全荷重にてトイレ歩行可としている。階段昇降開始の条件はT杖歩行100m可能となった時点とし、手すりを使用した2足1段で昇降可能と判断された日を達成日とした。階段昇降の支持脚は膝屈曲ROMの大きい側とし、左右同じ角度の場合には普段昇降している側を支持脚とした。T杖歩行は歩行器を両手で支持した状態で安定して歩行可能であれば開始し、見守りにて可能と判断された日を開始日とした。膝屈曲ROMは他動にて測定した。統計処理は2群間で階段昇降達成日数、T杖歩行開始日、膝屈曲ROMについてそれぞれ対応のないT検定を行い、有意水準(P)は5%以下とした。 【結果】階段昇降平均達成日はA群10.4±2.0日、B群34.0±14.4日、T杖歩行平均開始日はA群6.2±2.9日、B群14.7±11.3日、平均膝屈曲ROMはA群102.0±8.2度、B群92.5±8.8度であった。また2群間での階段昇降達成日数、T杖歩行開始日、膝屈曲ROMそれぞれに有意差(P<0.05)が認められた。 【考察とまとめ】MIS‐TKAは早期の自宅復帰が可能となることが特徴である。今回の研究結果は階段昇降の早期達成には、膝屈曲ROMの早期改善とT杖歩行の早期開始が必要であることを示唆している。
Bibliography:12
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.26.0.12.0