研究 慢性肺血栓塞栓症における肺動脈内膜肥厚の血管内エコーによる評価 肺動脈圧および血漿ナトリウム利尿ペプチドとの比較検討

【はじめに】肺血栓塞栓症は我が国においても今後加速的に増加することが予測される疾患であり,早期診断のみならず,その病態の把握やより有効な治療法への関心が高まっている. 【目的】本研究では,慢性肺血栓塞栓症例において血管内エコー上肺動脈内膜肥厚がしばしば認められる点に着目し,その病態生理学的意義を解明するために,内膜肥厚の程度と肺血行動態および血漿BNP,ANP濃度との関連性について検討を行った. 【方法】臨床経過,肺動脈造影および肺換気血流シンチにより慢性肺血栓塞栓症と診断した15例に血管内エコーを施行し,肺動脈内膜厚を評価した.また,同一症例において肺血行動態,血漿BNP,ANP濃度を測定し...

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Published in心臓 Vol. 32; no. 6; pp. 473 - 478
Main Authors 菱田, 仁, 横井, 博厚, 野村, 雅則, 近藤, 貴久, 加藤, 千博, 松山, 裕宇, 武田, 京子, 岩瀬, 正嗣, 長坂, 綾子, 渡邉, 佳彦, 鯉江, 伸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.06.2000
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.32.6_473

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Summary:【はじめに】肺血栓塞栓症は我が国においても今後加速的に増加することが予測される疾患であり,早期診断のみならず,その病態の把握やより有効な治療法への関心が高まっている. 【目的】本研究では,慢性肺血栓塞栓症例において血管内エコー上肺動脈内膜肥厚がしばしば認められる点に着目し,その病態生理学的意義を解明するために,内膜肥厚の程度と肺血行動態および血漿BNP,ANP濃度との関連性について検討を行った. 【方法】臨床経過,肺動脈造影および肺換気血流シンチにより慢性肺血栓塞栓症と診断した15例に血管内エコーを施行し,肺動脈内膜厚を評価した.また,同一症例において肺血行動態,血漿BNP,ANP濃度を測定した. 【結果】血管内エコー上内膜肥厚を認める場合,壁厚よりもその分布が症例間で異なるように思われたため,内膜肥厚の状態を3群に分類した.内膜厚の増加が主幹動脈にまで及ぶ症例ほど肺動脈平均圧,肺血管抵抗,血漿BNP,ANP濃度およびBNP/ANPは高値を示し,右心系の圧負荷が高度であるという病態が明らかとなった. 【結語】血管内エコーは慢性肺血栓塞栓症例において主肺動脈から末梢動脈までの異なった肺動脈内膜肥厚分布を描出し得,それは肺高血圧や血漿BNP,ANP濃度と密接な関連を持つものと推察された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.32.6_473