訪問リハビリテーション導入時のアプローチ 退院直後の方と在宅生活者の比較

【はじめに】リハビリテーション(以下リハ)において「療法士と患者および家族との信頼関係がなされずに訓練効果を期待するのは困難である」という事は周知の事実であろう.とくに訪問リハは入院でのリハと比べて施行頻度が少ないため,訪問導入時のアプローチ如何が,その後の訓練効果に大きく影響すると我々は考えている. 今回,当院での訪問リハ導入時のアプローチについて,約3年間の業務実績を元に,訪問導入時に退院直後だった方々(以下,退院群)と,すでに在宅生活をされていた方々(以下,在宅群)を実際の症例を通して比較し,若干の考察を加えて報告する. 【訪問実績】当院では平成16年10月に訪問看護ステーションを開設し...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 47
Main Authors 柳澤, 俊史, 瀧上, 秀威, 佐藤, 晴美, 権上, 和彦, 計良, 智仁, 宇野, 享子, 家高, 伸行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2008
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.27.0.47.0

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Summary:【はじめに】リハビリテーション(以下リハ)において「療法士と患者および家族との信頼関係がなされずに訓練効果を期待するのは困難である」という事は周知の事実であろう.とくに訪問リハは入院でのリハと比べて施行頻度が少ないため,訪問導入時のアプローチ如何が,その後の訓練効果に大きく影響すると我々は考えている. 今回,当院での訪問リハ導入時のアプローチについて,約3年間の業務実績を元に,訪問導入時に退院直後だった方々(以下,退院群)と,すでに在宅生活をされていた方々(以下,在宅群)を実際の症例を通して比較し,若干の考察を加えて報告する. 【訪問実績】当院では平成16年10月に訪問看護ステーションを開設し, 翌年1月から理学療法士の訪問サービスも開始した.平成17年1月から平成19年12月までの訪問総件数は2095件,延べ利用者人数74名(男28,女46),年齢は平均77.9歳(47-96)であった. 【退院群と在宅群の比較】退院群は46名(62%) ,在宅群は28名(38%)であった.機能訓練以外に行なった指導内容別実施率では全ての項目で退院群の方が高く,過去にリハを受けた経験が有る者は退院群96%,在宅群32%であった. 【症例1:退院群のケース】77歳,男性,C3-4頚椎損傷,不全四肢麻痺で他院に5ヶ月間入院した後,ADL全介助にて自宅退院となった.日中の介護者は妻のみで訪問リハ導入時の心理的不安感の訴えは強く,起居動作・移乗ともに妻一人では困難であった.機能訓練と平行して妻への介助法を指導し,繰り返し練習を行った.導入1年後には起き上がりが自立し,妻の介助での移乗動作および上肢支助での立位保持が1分間可能となった. 【症例2:在宅群のケース】80歳,女性,虚血性心疾患を呈しており車椅子駆動や移乗動作に夫の介助を要していた.導入時は夫の介助負担が大きくリハによる身体機能向上へのニーズが強かった.環境整備と介助指導のみで導入初期の段階にて移乗動作時の介助量が減少した. 【考察】実施内容において機能訓練以外の指導項目別実施率を比較すると,退院群の方が全ての項目で高率に行なわれていた.このことから退院群においては入院生活から在宅生活へのスムースな移行の援助が重要であると再確認された.また症例1のように維持期以降でも能力障害の改善がみられた事から,継続的なリハの必要性も再認識された.一方在宅群はリハの経験が少なくそのニーズは多様である.これまでの介護生活に対して本人や家族の意見を尊重しつつ,実際の訴えだけでなく隠れたニーズを見出す事が重要と考える.
Bibliography:5
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.27.0.47.0