筋萎縮性側索硬化症における胃瘻造設時期の検討 当院の状況とALSガイドラインとの比較

【目的】当院における,筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の胃瘻造設術(PEG)の導入時期について調査し,ALS治療ガイドラインで示される時期と実際に造設した時期との間に解離があるかを検討することである. 【対象】2001年から2009年1月までに当院において,PEGを行ったALS患者41名(男性22名,女性19名)を対象とした.平均年齢は62±10.9歳.病型は上肢型13名(男性10名,女性3名),下肢型9名(男性3名,女性6名),球麻痺型16名(男性6名,女性10名),呼吸筋麻痺進行型3名(男性3名,女性0名)である. 【方法】PEG時の年齢,発症期間,ALS機能評価スケール(ALSFRS-R...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 4
Main Authors 玉田, 良樹, 佐藤, 美由紀, 馬木, 良文, 寄本, 恵輔, 大久保, 裕史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2009
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.28.0.4.0

Cover

More Information
Summary:【目的】当院における,筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の胃瘻造設術(PEG)の導入時期について調査し,ALS治療ガイドラインで示される時期と実際に造設した時期との間に解離があるかを検討することである. 【対象】2001年から2009年1月までに当院において,PEGを行ったALS患者41名(男性22名,女性19名)を対象とした.平均年齢は62±10.9歳.病型は上肢型13名(男性10名,女性3名),下肢型9名(男性3名,女性6名),球麻痺型16名(男性6名,女性10名),呼吸筋麻痺進行型3名(男性3名,女性0名)である. 【方法】PEG時の年齢,発症期間,ALS機能評価スケール(ALSFRS-R),病型についてカルテより後方視的に調査し, 1.気管切開前にPEGをした群(PEG先行群)と気管切開後にしたPEGをした群(気管切開先行群) 2.各病型別 3.PEG先行群のPEG時期の呼吸機能 4.気管切開後のPEG造設時期について比較検討した.統計解析はstat View 5.0(1992-98 SAS Institute Inc )を使用した. 【結果】44%のALS患者が気管切開後にPEGをしていた.年齢はPEG先行群61.5±10.2歳,気管切開先行群62.8±11.9歳.発症期間はPEG先行群2.2±0.8年,気管切開先行群4.0±4.7年.ALSFRS-Rは,PEG造設群26.1±8.2点,気管切開先行群11.6±5.6点であった.病型別は,球麻痺型ではPEG先行群が75%と多く,呼吸筋麻痺進行型では全例が気管切開先行群となっていた.各病型別は,上肢型3.4±3.4年,下肢型2.5±1.1年,球麻痺型3.1±4.1年,呼吸筋麻痺進行型1.8±0.9年.ALSFRS-Rにおいては,上肢型17.0±9.4点,下肢型16.4±7.9点,球麻痺型24.5±11.1点,呼吸筋麻痺進行型16.3±4.5点であった.呼吸機能は,PEG先行群では拘束性換気障害を呈し,血液ガス分析上は既に慢性呼吸性アシドーシス・代償性代謝が亢進している状態であった.気管切開後のPEG時期は,平均6ヵ月であるがばらつきが大きく,病型別にみてもばらつきが大きいことが認められた. 【考察】4割を超えるALS患者が気管切開後にPEGが行われていた.PEGが先行した群においても既に呼吸機能が低下していることが明らかとなり,ALS治療ガイドラインで示される時期と実際に造設した時期との間に解離があることが示された.ALSは様々な経過を辿って進行するため,PEG時期の決定は難しい.またPEGにおいては,患者の明確な意思が重要となる.したがって,ALSにおける嚥下障害に対し,より多くの判断材料を適切な時期に提供し,その中において患者が自由に意思決定できるよう機能的,教育的,精神的にアプローチをすることが必要であると考えられた.
Bibliography:4
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.28.0.4.0