食道再建挙上胃管に発生し大動脈に穿孔した消化性潰瘍の1救命例

49歳, 女性. 胸部中部食道癌 (Im, Stage IV) に対して1986年8月右開胸開腹胸部食道全摘兼胸骨後経路胃管挙上再建術を行った. 術後後照射を行い, その後経過良好であったが, 術後1年8か月後に吐血・下血を主訴としショック状態で再受診した. 緊急内視鏡にて挙上胃管後壁に深い潰瘍性病変があり, 同部には多量の凝血塊が付着し拍動性に動いていた.保存的に治療を行い, 一時的に止血しえたが, 翌日再検査中に突然噴水様の大量吐血が出現し心停止・呼吸停止状態となった. 蘇生術を施行しながら直ちに緊急手術を行った. 術中所見ではこの潰瘍は大動脈弓部前面に穿破しており, 穿破部大動脈壁の直接...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 23; no. 10; pp. 2376 - 2379
Main Authors 安本, 和生, 豊田, 忠之, 遠山, 和成, 伊関, 丈治, 高木, 正和, 中上, 和彦, 袴田, 光治, 野家, 環, 高林, 直記, 安藤, 史隆, 荻野, 知己, 磨伊, 正義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 1990
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Summary:49歳, 女性. 胸部中部食道癌 (Im, Stage IV) に対して1986年8月右開胸開腹胸部食道全摘兼胸骨後経路胃管挙上再建術を行った. 術後後照射を行い, その後経過良好であったが, 術後1年8か月後に吐血・下血を主訴としショック状態で再受診した. 緊急内視鏡にて挙上胃管後壁に深い潰瘍性病変があり, 同部には多量の凝血塊が付着し拍動性に動いていた.保存的に治療を行い, 一時的に止血しえたが, 翌日再検査中に突然噴水様の大量吐血が出現し心停止・呼吸停止状態となった. 蘇生術を施行しながら直ちに緊急手術を行った. 術中所見ではこの潰瘍は大動脈弓部前面に穿破しており, 穿破部大動脈壁の直接縫合により止血し救命することができた. 挙上胃管に発生する潰瘍性病変の報告は, 本邦では5例ときわめて少なく, このように大動脈へ穿通・穿破し, かつ救命しえた例の報告はいまだ見られない. 挙上胃管潰瘍発生の成因について検討をくわえ報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.23.2376