メガネカイマンの味蕾の微細構造

口腔粘膜には, 化学受容をはじめとした様々な感覚装置が発達している. これらの感覚器の種類と構造は, 動物綱の間で異なる. この変異を系統発生の観点から探るうえで, ワニ目は, 哺乳類と鳥類の共通の祖先に近縁な現存爬虫類として重要な位置にある. そこで今回は, メガネカイマンの味蕾を形態学的に検索した. 【方法】メガネカイマンの舌を常法に従って, グルタールアルデヒドとオスミウム酸により二重固定し, 脱水, エポキシ樹脂に包埋した. 超薄切片をウランと鉛で染色し透過電顕で観察した. 【結果と考察】味蕾は舌背の粘膜上皮内に散在し, 大型で台形を呈し, その頂部は上皮層の表面に達する. 透過電顕下...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 41; no. 5; p. 433
Main Authors 吉江紀夫, 横須賀宏之, 藤田恒夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.1999
Japanese Association for Oral Biology
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ISSN0385-0137

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Summary:口腔粘膜には, 化学受容をはじめとした様々な感覚装置が発達している. これらの感覚器の種類と構造は, 動物綱の間で異なる. この変異を系統発生の観点から探るうえで, ワニ目は, 哺乳類と鳥類の共通の祖先に近縁な現存爬虫類として重要な位置にある. そこで今回は, メガネカイマンの味蕾を形態学的に検索した. 【方法】メガネカイマンの舌を常法に従って, グルタールアルデヒドとオスミウム酸により二重固定し, 脱水, エポキシ樹脂に包埋した. 超薄切片をウランと鉛で染色し透過電顕で観察した. 【結果と考察】味蕾は舌背の粘膜上皮内に散在し, 大型で台形を呈し, その頂部は上皮層の表面に達する. 透過電顕下で, 構成細胞はI型, II型, III型およびIV型細胞の4種類に分類された. I型細胞は, 最も出現頻度が高く, 頂部細胞質に小型の顆粒を蓄積する. II型細胞は, よく発達した滑面小胞体とゴルジ装置を有する. III型細胞は神経とシナプスを形成し, シナプス膜付近に有芯小胞(直径約70nm)を配するので味覚受容細胞と同定された. IV型細胞は味蕾の基底部に位置する小形の細胞で, 少数のミトコンドリアと多量の遊離リボゾームを含み, 未分化の様相を呈する. 以上の所見より, 本種の味蕾は哺乳類のそれにきわめて類似することが明らかにされた.
ISSN:0385-0137