抜歯窩の治癒過程におけるBMPの遺伝子発現

体重約40gのWister系ラットを使用し, 上顎第1臼歯を抜歯後, 1, 2, 3, 4, 5, 7, 14日後に4%paraformaldehyde溶液で灌流固定を行いin situ hybridization(ISH)を用いて抜歯窩の治癒過程におけるBMPの遺伝子発現を観察した. probeはマウスBMP-2(580bp)とBMP-6(470bp)cDNAを用いた. 各種制限酵素でvectorを切断後, [α-35S]UTP存在下で, RNApolymeraseを用いてanti-sense鎖およびsense鎖の放射性RNAprobeを作製し, ISHを行った. BMP-2anti-sen...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 40; no. 1; pp. 42 - 52
Main Authors 稲毛稔彦, 上原任, 桑田文幸, 大井田新一郎, 下川仁弥太, 佐々木達哉, 大内裕貴, 堀部崇大, 金子勝彦, 鴨川紘征, 寺門正昭, 佐藤廣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.02.1998
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Summary:体重約40gのWister系ラットを使用し, 上顎第1臼歯を抜歯後, 1, 2, 3, 4, 5, 7, 14日後に4%paraformaldehyde溶液で灌流固定を行いin situ hybridization(ISH)を用いて抜歯窩の治癒過程におけるBMPの遺伝子発現を観察した. probeはマウスBMP-2(580bp)とBMP-6(470bp)cDNAを用いた. 各種制限酵素でvectorを切断後, [α-35S]UTP存在下で, RNApolymeraseを用いてanti-sense鎖およびsense鎖の放射性RNAprobeを作製し, ISHを行った. BMP-2anti-sense鎖RNAを用いたISHでは, signalは抜歯後1日には抜歯窩の血餅などに認められなかった. 抜歯後2日ではsignalは血餅下部, 槽間中隔の頂部付近の結合組織細胞や抜歯窩中央部の槽間中隔骨面に近接する結合組織細胞に観察された. 抜歯3日以降ではBMP-2によるsignalは極めて弱かった. BMP-6anti-sense鎖RNAを用いたISHでは, 抜歯後1日に血餅周囲の結合組織細胞にsignalがみられた. 抜歯後3日になると, signalは抜歯窩を被う再生された上皮から歯槽中隔部にいたる結合組織に含まれる細胞にみられた. この時, 骨芽細胞にはsignalはほとんど観察されなかった. また, 抜歯後4日以後では抜歯窩には明らかなsignalは観察されなかった. 以上のように, BMP-6probeを用いた反応ではBMP-2よりも早い時期に遺伝子発現が観察された. この所見は両probeは異なった種類のBMPの遺伝子発現を検出したものであると考えられた. 抜歯窩の治癒過程の初期に強い遺伝子発現を示した細胞は, 前骨芽細胞であると考えられた. BMPは骨形成における初期の段階特に骨芽細胞における初期分化に強い関係があることが示唆された.
ISSN:0385-0137