ラット小脳プルキンエ細胞の低酸素負荷による形態変化
低酸素が神経細胞の超微形態変化に与える影響についてはあまりよく知られていない. 低酸素に対し弱いとされている小脳プルキンエ細胞について, 低酸素負荷をかけ, 細胞構造の形態変化とその可逆性について検討した. 体重350~400gのラットに気管内挿管し, ハロセン麻酔下に血圧, 心電図をモニターしながら5%O2, 95%N2により換気, 低酸素負荷をかけた. 血圧は負荷開始直後から低下を始め, 4~5分後には50mmHg程度まで低下したが, 6分後に80mmHg程度に回復し, 約10分後までその状態を維持した. その後は血圧は徐々に低下し11~12分後に50mmHgを切り, その後急速に下降して...
Saved in:
Published in | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 54; no. 3; p. 271 |
---|---|
Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
北関東医学会
01.08.2004
Kitakanto Medical Society |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1343-2826 |
Cover
Summary: | 低酸素が神経細胞の超微形態変化に与える影響についてはあまりよく知られていない. 低酸素に対し弱いとされている小脳プルキンエ細胞について, 低酸素負荷をかけ, 細胞構造の形態変化とその可逆性について検討した. 体重350~400gのラットに気管内挿管し, ハロセン麻酔下に血圧, 心電図をモニターしながら5%O2, 95%N2により換気, 低酸素負荷をかけた. 血圧は負荷開始直後から低下を始め, 4~5分後には50mmHg程度まで低下したが, 6分後に80mmHg程度に回復し, 約10分後までその状態を維持した. その後は血圧は徐々に低下し11~12分後に50mmHgを切り, その後急速に下降して心停止をきたした. 以上のような低酸素換気の下に一定時間毎に心臓より直接固定液を流し, 材料を採取, 電子顕微鏡での観察をおこなった. 低酸素負荷16分の心停止後, 固定した小脳ではすべての部位で, 核のeuchromatin領域の電子密度が低下し, necroticな変化の初期と考えられる像を示していた. 低酸素負荷5分では樹状突起に本来分散して存在していた滑面小胞体が重層化し層板小体を形成しはじめ, 10分になると一層広範な重層化が認められた. この頃になると細胞体の粗面小胞体も層板化を始めていた. 次にこれらの層板小体の可逆性を見るため低酸素負荷10分の後, 100%O2に切り換え, 換気するとゆっくりと層板小体は減少し, 30分の樹状突起でわずかに残存, 60分ではほとんどの部位でほぼ消失していた. 小脳プルキンエ細胞のこの層板小体の形成は代謝型グルタミン酸受容体の刺激の結果引き起こされると考えられており, 層板化はIP3受容体を介するCa2+放出を抑制するための適応と考えられる. |
---|---|
ISSN: | 1343-2826 |