膵癌に対する上腸間膜動脈周囲神経叢を温存した拡大郭清

膵癌の切除成績向上と術後のQOL維持を両立させることを狙って, 上腸間膜動脈周囲神経叢を温存した拡大後腹膜郭清を試みた. 上腸間膜動脈根部を中心に術中照射を併用した. この術式を標準術式とした1990年以降 (後期) と1980年から1989年まで (前期) の治療成績を比較したところ, 後期において切除率・生存率の向上が認められた. 特に, 総合的進行度が低いか, あるいは局所進行癌であってもリンパ節転移を伴わない症例での成績は著しく向上した. 神経叢を温存できた症例では難治性下痢の発生はほとんど見られなかった. 開腹非切除例では早期に死亡する症例が多かった. 以上の成績から, 上腸間膜動脈...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 30; no. 10; pp. 2059 - 2063
Main Authors 小菅, 智男, 島田, 和明, 山本, 順司, 山崎, 晋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.10.1997
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Summary:膵癌の切除成績向上と術後のQOL維持を両立させることを狙って, 上腸間膜動脈周囲神経叢を温存した拡大後腹膜郭清を試みた. 上腸間膜動脈根部を中心に術中照射を併用した. この術式を標準術式とした1990年以降 (後期) と1980年から1989年まで (前期) の治療成績を比較したところ, 後期において切除率・生存率の向上が認められた. 特に, 総合的進行度が低いか, あるいは局所進行癌であってもリンパ節転移を伴わない症例での成績は著しく向上した. 神経叢を温存できた症例では難治性下痢の発生はほとんど見られなかった. 開腹非切除例では早期に死亡する症例が多かった. 以上の成績から, 上腸間膜動脈周囲神経叢を温存し術中照射を併用した拡大後腹膜郭清は, 根治性と術後QOLを両立できる術式であることが示された. また, 診断や姑息的な処置のみを目的とした手術はできる限り避けるべきであると考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.30.2059