四丘体腫瘍と感染に起因する急性水頭症の術前MRI精査 ETV(endoscopic third ventriculostomy)実施症例

〈緒言〉造影剤を使用せず、水を強調した撮影法であるhydrographyは現在では各領域において広く普及している。頭部領域ではcisternographyとして神経や血管の微細な構造を描出し診断を目的として使用され、ワークスステーションコンピューターの進歩により立体3D画像としても診断が可能になった。今回我々は上記撮影法と画像処理の一つであるvirtual endoscopy(仮想内視鏡)法により、病態の診断及び術前シュミレーションとして非常に有用であった症例を経験したので報告する。 〈使用装置・条件〉 装置:東芝MRI 1.5テスラVISART/progress QD head coil使用...

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Published in日本農村医学会学術総会抄録集 p. 244
Main Authors 海津, 元樹, 吉村, 淳一, 西山, 健一, 佐々木, 隆昭, 川崎, 昭一, 小宮山, レイコ, 宮崎, 勝吉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2007
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.56.0.244.0

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Summary:〈緒言〉造影剤を使用せず、水を強調した撮影法であるhydrographyは現在では各領域において広く普及している。頭部領域ではcisternographyとして神経や血管の微細な構造を描出し診断を目的として使用され、ワークスステーションコンピューターの進歩により立体3D画像としても診断が可能になった。今回我々は上記撮影法と画像処理の一つであるvirtual endoscopy(仮想内視鏡)法により、病態の診断及び術前シュミレーションとして非常に有用であった症例を経験したので報告する。 〈使用装置・条件〉 装置:東芝MRI 1.5テスラVISART/progress QD head coil使用 条件:FASE3D/TR6000/TE240/スライス0.9mm/マトリックス224×224/FOV20/NA1/1shot 矢状断像にて撮影 ワークスステーション:ZIO-M900(アミン) 〈症例〉10代女性。上肢シビレ、頭痛、嘔吐、意識障害にて来院。2週間前に耳下腺炎の既往あり。眼底乳頭浮腫、頭部CTで脳室拡大を認め急性水頭症と診断。耳下腺炎感染により脳軟膜炎を併発し中脳水道の閉塞が疑われ、病態確認及び治療方針決定の為、MRI検査を実施。 〈所見〉脳室や漏斗の拡大、中脳水道の閉塞を認めた。四丘体の腫大もあり腫瘍の存在が疑われ、造影検査も追加実施。腫瘍と思われる四丘体に造影効果は認めず血流が非常に弱いと考えられた。この為、中脳水道開存術ではなく第3脳室底開窓術の実施を検討。同時に出血の危険性が少ないと考え四丘体の生検も実施する方針となった。鞍背と脳底動脈や後交通動脈及び動眼神経の間に、穿孔できる広さがあることがvirtual endoscopy画像で確認。拡大したモンロー孔~第3脳室~四丘体中脳水道部までの構造をシネ画像でも確認。術後の開存状態もvirtual endoscopy画像で確認。 〈結語〉同一FASE3Dデータをもとに、1.脳神経実質、2.漏斗等の膜状形態、3.血管の3データを作成。フュージョン処理後にvirtual endoscopy画像として表示。観察方向もシュミレーションとなるように術中と同方向で作成。炎症により膜肥厚の存在を考慮して、透過度を変化させた画像も作成した。2D画像で閉鎖部の確認やflow voidの有無による髄液交通診断は以前から云われているが、今回virtual endoscopy画像で術部位、術式決定、シュミレーション、術後確認が新たに可能であった。 水頭症の治療には脳室腹腔シャント術、内視鏡的開窓術がある。内視鏡的開窓術では利点として1.シャントチューブやバルブ等の異物留置不要。2.約3cm程度の切開で可能。欠点として内視鏡本体による通路周辺の脳組織損傷、穿孔時に膜下の血管や神経位置が問題となり術中に損傷する危険性がある。開窓部の広さも開窓術を行う部位や術式の決定には重要な情報である。 今回MRI検査において、上記欠点の危険度や術式決定に必要な情報が事前に得られた。 術中画像でも作成した画像と合致した結果が得られ、同様の症例には今後も実施する方針となった。 今回の症例は「東芝画論 The Best Image 2006」MRI1.5テスラ部門で最優秀賞受賞。
Bibliography:2D15
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.56.0.244.0