エンダー釘とプレートやスクリューを併用した骨接合術 低侵襲手術を目指して
【はじめに】エンダー釘はAO プレートのrigid な固定法に対してelastic な内固定材料として大腿骨や下腿骨の骨幹部骨折、大腿骨頚部骨折などに用いられてきた。しかし、近年大腿骨頚部骨折や転子部骨折にはγ-type nail が多く用いられるようになり、下腿骨や大腿骨の骨幹部骨折には髄内釘やプレートを用いた小侵襲手術(MIPO)が普及するにつれ、エンダー釘が使用される頻度が減っている。エンダー釘の利点は小侵襲で骨膜などの血行を温存し、elastic fixation により豊富な仮骨形成能を有しているところにある。新しい術式としてエンダー釘とプレートやスクリューを併用し、小侵襲による骨接...
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Published in | 日本農村医学会学術総会抄録集 p. 339 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2008
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.57.0.339.0 |
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Summary: | 【はじめに】エンダー釘はAO プレートのrigid な固定法に対してelastic な内固定材料として大腿骨や下腿骨の骨幹部骨折、大腿骨頚部骨折などに用いられてきた。しかし、近年大腿骨頚部骨折や転子部骨折にはγ-type nail が多く用いられるようになり、下腿骨や大腿骨の骨幹部骨折には髄内釘やプレートを用いた小侵襲手術(MIPO)が普及するにつれ、エンダー釘が使用される頻度が減っている。エンダー釘の利点は小侵襲で骨膜などの血行を温存し、elastic fixation により豊富な仮骨形成能を有しているところにある。新しい術式としてエンダー釘とプレートやスクリューを併用し、小侵襲による骨接合術を開発した。この術式を10症例に適応し、手術手技・手術適応・手術成績について報告する。 【手術手技・結果・考察】プレートやスクリューとエンダー釘を併用する症例は大きく3つのグループに分けられる。1つのグループは、大腿骨や脛骨の二ヶ所以上の骨折である。大腿骨では遠位顆部の骨折と骨幹部骨折の合併で、遠位をプレートまたはスクリューで固定し、大転子部からエンダー釘を打ち込む。脛骨では高原骨折と骨幹部骨折の合併例、または、遠位骨幹端部骨折と骨幹部骨折の合併例で、近位または遠位をプレートやスクリューで固定し、エンダーで釘を遠位または近位から打ち込み、低侵襲手術を可能にした。2番目のグループは既にプレートやピン・スクリューを使って観血的整復固定術が行われ骨癒合した後に、新たな外傷により固定材料の近傍で骨折した症例である。このような症例に対しては内固定材料を抜去して再度、観血的整復固定術をおこなった治療報告が多い。われわれは今回報告したように内固定材料は抜去せず、エンダー釘を小皮切から打ち込むことで骨折部を固定し小侵襲手術を可能にした。エンダー釘の打ち込みに際しては、ネイルがflexibleであるため先端がスクリューに触れても衝突することなく、スクリューの横を滑り抜ける。われわれの経験した症例で打ち込みに難渋した症例はない。ただ、ネイルの先端の方向がやや変化し、骨皮質を貫くことがあるが、ネイルの長さを考慮すれば問題とならない。もう1つのグループは大腿骨に広範囲の粉砕骨折または螺旋骨折が認められる骨折で粉砕骨折にはMennen プレートで粉砕部をまとめ、心棒としてエンダー釘を使用した症例で、螺旋骨折には一部をスクリューで固定しエンダー釘を追加固定した症例である。このような症例は選択肢として他の方法もありうるが、試みて良い方法だと考えている。今回報告した10例全例に骨癒合が得られ、豊富な仮骨形成が認められた。骨癒合の時期を正確に判定するのは困難であるが、少なくとも術後3ヶ月で良好な仮骨形成を認めた。この手技により、侵襲を可及的に小さくすることによって、感染などの手術合併症を減らすことができると考えた。 【結語】われわれは大腿骨または下腿骨の複数ヶ所骨折の治療に対してプレートやスクリューにエンダー釘を併用することによって、低侵襲手技を可能にした。また、ピンやプレートを使った大腿骨骨折の治療後に内固定材料近傍で骨折をきたした症例に対し、内固定材料を抜去することなくエンダー釘を打ち込むことによって小侵襲で良好な骨癒合を得た。この新しい手術手技は有用と考えられた。 |
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Bibliography: | 2J292 |
ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.57.0.339.0 |