総合人間学への方法/道 上杉鷹山の女訓とともに
人間学総合化は主に西欧型の「人間」概念に依拠し、上空飛翔的普遍性に基づく共通尺度を模索してきた。だが学の目的が人間性再興にあるなら、照顧脚下の隘路を歩む必要がある。本稿は江戸期の大名、上杉鷹山の女訓が女性尊重/抑圧と相反する評価に分裂した要因を、仮説的で断片的な人間像の偶像視に見る。そのうえで鷹山と同様に儒学の影響を受けながら、女性の権限を軽視した同時代人の松平定信と対比させ、両評価に対する弁証的理解を試みた。個が相対する場にて、私は義理の孫に対し、 老害にならぬよう律して一定の敬を以て公平に臨み、その成長や学びを喜ぶ鷹山と見えた。他方「安民」の責任倫理が問われる場で、私は「賢女」が感化や諫言...
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Published in | 総合人間学 Vol. 18; no. 1; pp. 17 - 31 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
総合人間学会
2024
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 2188-1243 |
DOI | 10.57385/synanthro.18.1_17 |
Cover
Summary: | 人間学総合化は主に西欧型の「人間」概念に依拠し、上空飛翔的普遍性に基づく共通尺度を模索してきた。だが学の目的が人間性再興にあるなら、照顧脚下の隘路を歩む必要がある。本稿は江戸期の大名、上杉鷹山の女訓が女性尊重/抑圧と相反する評価に分裂した要因を、仮説的で断片的な人間像の偶像視に見る。そのうえで鷹山と同様に儒学の影響を受けながら、女性の権限を軽視した同時代人の松平定信と対比させ、両評価に対する弁証的理解を試みた。個が相対する場にて、私は義理の孫に対し、 老害にならぬよう律して一定の敬を以て公平に臨み、その成長や学びを喜ぶ鷹山と見えた。他方「安民」の責任倫理が問われる場で、私は「賢女」が感化や諫言を通じて間接的に外の政治に関わることを許容する鷹山と出会った。この分析過程自体が常に既に私の人間理解における鑑として顕れており、今日の私/我々の生に対する人間学的意義を暗示しているのである。 |
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ISSN: | 2188-1243 |
DOI: | 10.57385/synanthro.18.1_17 |